大久保 克哉マスター
「地元の人が安く食べて飲んで、ぐでんぐでんに酔っ払ってもらいたい」
昨年、生まれ育った小樽に戻り、小樽ホルモン酒場「やみいち」(堺町2・小樽出世前広場内)を10月にオープンしたマスター(32)。
“金が欲しい”20歳の時にそう思って札幌に出た。「駅前のパチンコ屋でアルバイトをしていたが、このままずっと進むより自分で何かをやってみたい」と、完全歩合給(フルコミッション)でブランドスーツや携帯電話販売に携わった。
25歳になってファンドを始め、全国各地を飛び回り、忙しい日々を過ごしていたが、稼いだ金は全部ススキノに流れていった。「リーマンショックのニュースを見て本当に恐いと思った。何があるか分からない」とファンドをやめ、今度は、パートナーとともに白いたいやき「尾長屋」のフランチャイズ店の運営を始めた。たいやきブームの流れに乗って店舗展開を拡大させ、北海道本部も任されるほどに急成長した。
昨年、子供が生まれたことを機に、小樽の実家に戻ってきた。10年ぶりに花園繁華街に出て飲食店をぶらりと立ち寄ったところ、「あまりの人の少なさにびっくりした。人がいないいないと言っていても10年前に小樽に住んでいたときはまだいた」と、小樽の衰退ぶりに衝撃を受けた。
「たいやき屋で1店舗1日20万円ぐらいの売上げがあったが、ブームは去るもんだ。恐ろしい勢いで去っていった。2月のさっぽろ雪まつりのブース販売で、自分は手を引こうと思っていたので、何か小樽でやりたいなと思い始めた」
そんな折、雪まつり会場で、千歳のホルモン屋「やみいち」のオーナーと知り合い、そのミソダレの味に惚れた。「20代の頃に全国を回って、色々な美味しい店に行っていたので、自分がうまいと思えば絶対うまいという自信があり、この店の味でホルモン屋をやろうと決め、オーナーに味を売ってくれとお願いし
た」
知人の不動産屋の紹介で、堺町通りにある小樽出世前広場のテナントスペースを紹介された。「今までの経験から2ヶ月で初期投資分を取り戻さないとアウトだと思っているので、100万円以上はかけないと決めていた。店舗には炭焼きの設備も整っていたのでやることにした」と、10月にオープン。
「堺町通りで地元に目を向けている人は少ないと思う。だから、まずは地元の人が安く食べて飲んでもらえるようにしたい」と、メニューは230円から980円まで全て1,000円未満。「ビールが好きだから、これにはこだわる」と、アサヒスーパードライ中ジョッキ280円。「地元の人が何回も足を運んで、ぐでんぐでんに酔っ払ってもらえれば嬉しい」と語る。
今後は、朝里、花園でのチェーン展開と小樽のB級グルメの開発に取り組む。「細木数子が今年11月から3年間が運気が良いと言ってるので、それを信じる」と、優しい笑顔から強い意気込みを感じさせる。