前倉 久子ママ
前倉崇利さん・久子さん夫妻は、大正末期に建てられた石蔵を利用して、1988(昭和63)年8月に、喫茶店「ストアハウス大坂屋」を開店。今年で創業30年を迎え、夫婦2人で歴史を刻んでいる。
外壁に掲げられていた以前の質屋の屋号をそのまま使い、店名を「大坂屋」とした。
店舗正面に掲げるシンボル的存在の八角のオブジェは、店内にあるテーブルと椅子と同じ家具職人が作ったもので、来店者にインパクトを与え、久子さんの気さくな会話が客を和ませる。
1階は、オープンキッチンとカウンター席が7席。昭和を感じさせる置物が所狭しと飾られ、懐かしさに心がほっとする。大小様々なビクター犬「ニッパー」や招き猫、古めかしいランプや電話、お客さんが描いた絵など、頂き物がほどんどだという。
そして、2階にはテーブル席が20席あり、柱の古時計が時を刻んでいる。昔懐かしいレコードがかかるジュークボックスが、現役続行中。1970(昭和45)年前後に製造され、100曲のレコードがスタンバイ。硬貨を入れ、聞きたい曲をボタンで選ぶ。開店時に従姉妹からもらい受け、30年の間、お客さんを楽しませてきた。
故障してしまった時もあったが、不思議な引き合わせで、直してくれるお客さんが現れるなどして、現在も使用可能。レトロな雰囲気の中で、70年代の懐かしい曲を聴き、口ずさみ、ゆっくりと時間が流れていく。
いつも夫婦2人で店を開け、マスターが作るナポリタン、ママが作るカスタードクリームケーキがお奨め。カラメルをベースにオレンジを入れて作るケーキも人気だ。なるべく冷凍物は使わないように、オーダーが入ってから丁寧に調理している。
久子さんは、夫婦2人で働ける喜びをしみじみと感じ、休日も大事だけれど、仕事しているのが自然に思えるという。
30年のエピソードは尽きない。久しく来店がなかった人に、何年かぶりで再会したり、独身の時も、結婚してからも、子どもが産まれ親子で、その子どもが大人になって来店してくれるなど、店とともに時を刻んできたんだなと感じる。
「生涯現役で、来客がある限り続けたい。足や腰の鍛錬を怠らず、今のままで働いていたい」と、今後を語る。
久子さんは、「ジュークボックスで、懐かしい音楽をどうぞ!」とPRした。