文学の妖精アナタニサマ展 小樽運河プラザ中庭で開催

 札幌の美術ユニットReguRegu(レグレグ)の小磯卓也さんが、2年前に書いた小説をもとに、妻カヨさんと共に製作した人形アナタニサマ13体を展示する「文学の妖精 アナタニサマ展」が、アナタニサマの日2月2日(金)16:00から小樽市観光物産プラザ(色内2)中庭で開かれた。

 

 2023(令和5)年3月に、文芸誌「逍遥通信8号」で発表され、10月にもおたるBook Art Weekの関連イベントで開催され好評だった。

 

 小樽に昔から伝わる文学の妖精・アナタニサマは、毛むくじゃらで真冬の極寒の夜に現れると言われ、「アナタニ」と一冊の本を差し出され、受け取ってページを開いたら最後、読むのが止まらなくなりその場で凍死してしまう。

 

 身を守るための呪文として、「ヨミマシタ、ヨミマシタ、モウヨミマシタ」と唱えると、妖精は本とともに消え去るが、死なずに助かった人は、生涯、嘘をついたことを後悔し、永遠に失われたその本の幻を追い求め、文学の果てしない魅力に取りつかれることとなるという伝説で、小樽に初めて現れたのは、1919(大正8)年1月20日。

 

 1月26付「日日小樽」に凍死した男と「アナタニサマなる怪物の噂」に関する記事が掲載され、その後、目撃証言が相次ぎ、いつしか小樽では、2月2日に大切な人に本に贈ると、その人はアナタニサマから守られるという風説が広まったという設定。

 

 同展を企画したのは、ジーンズショップロッキの平山秀朋さんと、協力者の高橋龍さん・眞柄利香さん。小樽らしい氷点下の寒さと雪が吹き荒れる悪天候の中、13体のアナタニサマが、雪の上にそっと置かれ当時の物語を再現。「2月2日に大切な人に本を贈る」という習慣を再び根づかせ、「文学のまち、小樽」を多くの人にアピールすることも目的のひとつ。

 

 SNSで知った市内外からアナタニサマファンが来場し、撮影を楽しむ吹雪の中、小磯夫妻も会場を訪れ、「もともと小樽のブックアートウイークに参加し、カヨさんと一緒に人形を出展していた。どんな人形を作ろうかと考えた時に、小樽にこのような伝説があったら面白いと小樽にいそうな話を考えた。

 

 人形は2年前から製作し13体ある。ぜひ小樽に展示させてほしいと、平山さんからも言われ、地図にこの辺だと伝えると、眞柄さんがイメージして撮影してくれた。人形は、もはや自分たちのものではなく小樽のもの。小樽でしか展示しない。

 

 アナタニサマが小樽でさらに広まり、1人歩きしてくれればと思う。1人1人が違う、冬の夜に現れる毛むくじゃらの本を勧めてくる生き物。見る人によって違い、母親に似ていた、死んだ妹に似ていたなど、その人のイメージでいろいろな話があって面白い。自分が関われたことが嬉しい」と話した。

 

 会場で流れるBGMはカヨさんが制作し、「BGMはアナタニサマの個展の時に作ったもので、アナタニサマが夜道を歩いているところから始まり、アナタニサマに会い、本を読んでそのまま終点するようイメージした組曲で、ピアノで表現している」と話した。

 

 アナタニサマになって大切は本を差し出している写真を、本への思いを込めたコメントと一緒にX(旧Twitter)に#アナタニサマごっこを付けて投稿。投稿された本は、夏休みに市立小樽図書館(花園)で、おすすめ図書として展示し貸出を予定。

 

 また、アナタニサマHPから好きなアナタニサマをダウンロードし、撮影した写真にコラージュする。ダウンロード期限は2月18日(日)まで。

 

 平山さんは、「予想以上の反響で皆さんに喜んでもらえた。市立図書館共同企画で、秋には2025(令和7)年カレンダーを制作するなどして、2月2日をアナタニサマの日に、今後定着させたい。雪あかりの期間中は、小樽文学館で2体の展示を予定している」と話した。

 

 札幌から訪れたファンは、「吹雪の中の人形がとてもリアリティがある。アナタニサマごっこを楽しんでいる」と満足していた。

 

 ◎アナタニサマ(外部)