中村善策没後40年・記念ホール開設35年を祝う特別展「加賀の北前船主・西谷家 中村善策の2つの故郷小樽と信州」が、市立小樽美術館(色内1)1階同ホールと2階企画展示室を会場に、10月21日(土)から開催され、9:30からオープニングセレモニーを行い、テープカットで開幕を祝った。
今回は絵画作品に留まらず、国立大学法人小樽商科大学・高野宏康客員研究員の研究により、さらに広い角度から内容深い特別展となっている。
迫俊哉小樽市長は、「大正時代の善策と西谷家の交流を紹介し、西谷家の装飾品を展示した小樽にゆかりのある特別展。文化を支えた北前船の別の側面も知ってもらい、西谷家や北前船について理解を深めてもらいたい」と述べ、善策氏の息子の嫁・中村正子氏も駆けつけ、「展覧会は5年毎に8回目の開催となり40年、尽力した皆さんに感謝する」と挨拶した。
会場に展示している装飾品の持ち主・西谷庄八と和喜の娘・西谷正子の孫で、兵庫県在住の佐野禎子氏は、「この度、幼い頃から知っていた画家の名がどんどん身近になり、絡まっていた糸を解くように、新しい世界を見せてくれている。おひげの優しいおじさんとは、母が1941(昭和16)年結婚祝いに絵を戴いた時の善策氏の感想だった。やっぱり母が伝えた通り、平和な絵を描く画家がぴったりだった。
今回の展示会では、祖母・西谷正子が生きた19年の短い生涯にスポットを当ててもらった。遺児の母にも心を寄せ、次世代に繋がるバトンを渡しでくださったことを、心から嬉しく感謝している」とコメントを発表した。
1階の同記念ホールでは、大正時代の同氏と北前船主・西谷家との交流を紹介。北前船主で旧小樽倉庫を創設した5代目西谷庄八(1860-1933)は、石川県加賀市の出身で、西谷家の全盛期を築き、小樽と深い関わりが明らかになった。
佐野氏所蔵の祖母・正子と母・明子の結婚支度品など、庄八の長男・西谷正治がデザインした正子用の着物、善策が明子の22歳の結婚を祝い贈った油彩「泉浜潮次」、小樽市総合博物館所蔵の小樽の商家で晴れの日を彩ったべっこうの簪や飾り櫛などを特別展示した。
善策が15歳で西谷海運KK(西谷回漕店)に入社し、勤務の傍ら夜間に小樽洋画研究所で絵画修行に没頭し、西谷家は画壇デビューを全面的に支援した。
善策と同年の正子は兄の後輩を婿養子に迎え、神戸で新生活をスタートさせたが、スペイン風邪にかかり二女洋子を出産後病死した。
その頃、神戸支店に勤務していた19歳の善策も大流行のスペイン風邪に遭遇し感染。危篤に陥り死の恐怖の中、辛うじて生き延びた。
企画展示室では、「中村善策の2つの故郷 小樽と信州」を開催し、故郷信州を描いた作品17点と小樽を描いた作品19点を展示、80号以上の大作が並び、豪華絢爛の特別展となっている。
星田七重学芸員は、「新しさとしては、西谷正子さんと善策の知られざる神戸時代の悲劇。その命が脈々と今に繋がっていることを紹介。その背景には恩人に感謝し絵を贈るなど、善策の人柄が現われている展覧会を1階で開催。
2階は、日本を代表する風景画家としての善策の底力が詰まっていて、改めて見て、本当に素晴らしい作家だと見直せる展覧会」と説明し、多くの来場を呼びかけている。
関連事業として、11月5日(日)に野瀬栄進ピアノコンサート、12月7日・14日・21日・28日の4日間限定で、有料入館者先着30名にポストカードセットプレゼントを企画。
WATASHI-BRAND編集室(chicaco代表)が、年4回季刊発行の小樽の写真zine27号OTARU Ture*Dure(税込300円)で、同館特別展と関連し「本物のお嬢様がいた頃」を特集。星田学芸員や高野氏の投稿記事もあり、より深く北前船主・西谷家を知る内容となっている。
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