11月17日夜、小樽市博物館などの主催で「まちの語りべ第一夜 色内・運河周辺」が運河プラザ3番庫で開催された。
博物館所蔵の古地図や古い写真をスクリーンに写しながら、小樽の歴史の「生き証人」の口から、小樽の昔と今を語ってもらうこの催しに、会場が満員になるほどの聴衆が詰めかけた。
「第一夜 色内・運河周辺」の「語りべ」は、小樽運河に面した船舶用品商、小樽船用品株式会社社長の北村猪之助(いのすけ)さん(69)。
北村さんは、昭和10年に、小樽運河の一本山側の通り、出抜小路に生まれ育った。稲穂小学校では俳優の故石原裕次郎氏と同級で、裕次郎や、運河にたくさんあった艀(はしけ)での荷役作業の手伝いの思い出などを語った。
「裕次郎のお母さんは、授業参観のときに見たら、一人だけパーマをかけていた。あれは何だと聞くと、パーマネントウエーブだという。私が最初に覚えた英語でした。」
「当時、この周辺に住んでいた人は、戦時中の強制疎開や商売上の理由でみな去ってしまい、いまも残っているのは私だけ。でも、最後までこの場所で商売を全うするのが私の願い」
「幼いときに、繁盛していた色内町の呉服屋で、男の従業員から同じ店の別の場所で働いている女性にたたんだ紙を届けるよう頼まれた。それを読んだ女性が泣いていたのを不思議に思ったが、いまから思うと恋文の使いを頼まれたのですね」
古地図に描かれた商店などを指しながら、かっての小樽の繁栄ぶりを人情話を交えて語る北村さんの話に、聴衆はまちの歴史を再発見する喜びを堪能した。
「まちの語りべ」は今後、第二夜はニシン漁について、第三夜は花園町かいわいについて行う予定で、日時、会場などは後日発表される。
写真提供「小樽市博物館」