市立小樽美術館特別展「画家と娘-岸田劉生<麗子>とともに」が、7月16日(土)から、同館(色内1)1階中村善策記念ホールと2階企画展示室で始まった。
娘・麗子の作品を中心に、油彩・水彩・版画・素描・装幀の作品・関連資料など約50点と、劉生と同じく春陽会創立に加わった小樽ゆかりの画家たちの作品も鑑賞する待望の展覧会となっている。
岸田劉生(1891-1929)は、大正から昭和初期の洋画家で、ゴッホやセザンヌの作品を知り、さらに北方ルネサンスに影響を受けた。娘の麗子をモデルに5歳から16歳まで約50点描き、国の重要文化財に「麗子微笑」他1点が指定されていることでも知られている。
肺病と診断され、療養のため東京から神奈川県の鵠沼に移住。画家人生における黄金期を迎え、人物画の傑作を多数生み出し頂点を極めた。
会場には5歳の麗子と16歳の麗子が展示され、神秘的な不気味さを醸し出している。写実を極めているように見えながら、部分的に写実を欠如させ、欠けた部分を自分の思いで再構成。より芸術性の高い作品になるという考え方から、劉生の写実の欠如の美が読み取れる。
劉生に影響を受け春陽会の設立に携わり、小樽に影響を与えた画家の長谷川昇・三浦鮮治・兼平英示などの作品も展示され、花を持たせた着物やおかっぱ頭姿が描かれている。
関東大震災後は京都に移り、作風に変化が見られた。日本美術の本物の素晴らしさを知り、油絵から日本画に変わる。中国の絵画や南画(文人画)、浮世絵に没頭し、東洋的感覚を作品に反映させようと試み38歳で亡くなった。
会場には、娘の本当の顔が分かる家族写真も展示されている。
星田七重学芸員は、「歴史的な画家であり、劉生を超える画家は今も出て来ていないと言われているほどの巨匠。印象としては小ぶりな作品が多く、キャンバスやあらゆる画材が貴重だった時代だと感じた。
質の高さ、圧倒的にすごい名作が並んでいる。洋風表現から東洋の表現に移り、38歳で亡くなっている。画業は20年。これだけの洋画の表現も日本画の表現も極めていった人。東洋画の最後はほのぼのとして、あらゆる制約から開放れた自由を感じる」と説明した。
特別展「画家と娘-岸田劉生<麗子>とともに」
7月16日(土)〜9月19日(月・祝)9:30〜17:00(最終入館16:30)
市立小樽術館(色内1)1階中村善策記念ホール・2階企画展示室
休館日:月曜日(7/18・9/19除く)・7/19・20・8/12 要観覧料
関連事業
7月16日(土)14:00 画家とモデル、画家と娘 山田菜月学芸員
8月7日(日)14:00 かき残されたもの-岸田劉生の日記より 金澤聡美小樽芸術村学芸員
8月20日(土)14:00 岸田劉生と白樺派-装幀画をめぐって 亀井志乃文学館館長
9月3日(土)14:00 大正初期の小樽画壇 星田七重学芸員