小樽出身の小説家・朝倉かすみ展が、市立小樽文学館(色内1)2階展示室で、小説50冊をはじめ、ストーリーに合わせて手作りした資料など70点で、小説に出てくるプラネタリウムウムや貸本屋を再現し、8月15日(日)まで開かれている。
朝倉さんは、小樽に生まれ16歳までを過ごした。30歳で小説を書き始め、43歳で作家デビュー。人の心の内側に迫り、世の中の理不尽さ、独特な文体が魅力の小説家だ。
引っ越しを繰り返すたびに土地々の日常生活を忘れてしまいがちだが、小樽での地図はどうしたって消えないそうだ。
同展では、小樽の思いが強く出ている作品「タイム屋文庫」(2008年5月)、「てらさふ」(2014年2月)、「ぼくは朝日」(2018年1月)の3つの小説を工夫して展示し、朝倉ファンはもちろん、1960年代生まれの同年代もかつての時間を共有し親しみが湧いてくる。
「タイム屋文庫」からは、作者の実家をモデルにした貸本屋を再現し、廃品を寄せ集めたとは思えない仏壇や茶箪笥、ソファやテレビなど、その時代を上手く表現している。
タイムトラベル専門書店「utouto」から借りた時間旅行小説が本棚に置かれ、新保製作所から薪ストーブを借りて展示する凝りようだ。
小樽の1970年を描くグラフィティ「ぼくは朝日」では、小学4年生の朝日君のお姉さんの大切な場所である小樽青少年科学館プラネタリウムも会場で再現した。
緑町に1963年に開館し、2006年12月に閉館した同館人気のプラネタリウムは、時代は違うが、かつて解説をしていた旭さんのナレーションで、小樽の夜空を7分間のプログラムで楽しめ、始まりの日が沈む時と、終わりの日が昇る時のメロディも懐かしい。
「てらさふ」では、ウィキペディアに載るほどの華々しい存在にあこがれる少女と、どこかにふらりと行ってしまいたいと常に夢想する2人の中学生の物語。同氏の一面と重なる部分を垣間見ることができる。
玉川副館長は、「小説の中に出てくる小樽は正確に細かく描かれ、作品の力も深く、描写も的確で感心した。朝倉さんの心の中に決して消えない小樽の地図、入船や緑町界隈を小説に描き、誰が読んでも思い当たる節があり、同調して楽しんでもらいたい」と、来館を呼び掛けている。
関連事業として、8月7日(土)14:00から同館1階研修室で、「極私的日常生活行動地図(小樽編)」と題して、朝倉さん自身が講演する、朝倉かすみ記念講演会を無料で実施。定員30名。
事前予約が必要で、8月1日(月)から電話受付を開始する。問合せ:0134-32-2388 市立小樽文学館。
特別展「朝倉かすみ展」 8月15日(日)まで
市立小樽文学館(色内1)2階企画展示室
入館料:一般300円、市内75歳以上・高校生150円、中学生以下無料
休館日:8月9日を除く月曜日・7月27日(火)・28日(水)・8月10日(火)・11日(水)