歴史と自然が根づく場所 なえぼ公園特別展

 小樽市総合博物館(手宮1)本館2階企画展示室で、歴史と貴重な自然環境について、過去の調査研究事例などを基に紹介した、企画展「わたしたちが見たなえぼ公園」が4月11日(土)から始まった。

 市民の憩いの場である同公園は、明治時代から営林署の苗圃として利用され、担当した昆虫専門の能瀬晴菜学芸員は、3年前から同公園の調査を行う中で、歴史も面白く、昔から施設として使われていたことで残る30ヘクタールの孤立林には、貴重な自然環境を残し、動植物の種類も多く、初めて企画展で紹介している。

 1893(明治26)年、植林用の苗木を育てるために、道庁が陸軍省から土地を借りて小樽苗圃(びょうほ)を開設したのがはじまり。

 1974(昭和49)年には、林野庁により、レクリエーションの森、自然観察教育林にも指定され、散策や野外学習の場として開放された。

 1985(昭和60)年に苗畑事業が廃止され、小樽市が土地を取得。園内の整備と共に、1995年(平成7)年に森の自然館が建設され、1997(平成9)年に公園が開設された長い歴史がある。

 当時の小樽の山は禿山が目立ち、小樽苗圃が開設してから13年間で252万本もの苗木を生産した記録が残る。苗木を作るほかにも、どのような樹木が適しているかの試験も行われていたため、小樽には自生しないクヌギなどが見られるのも、同公園の特徴のひとつ。

 会場には、なえぼ地区で実施された植物相調査や大規模な昆虫調査により残された貴重な資料を展示し、能瀬学芸員が、ピットフォールトラップ(地面にコップを埋めて落とし穴を作り、地面を歩きまわる昆虫を採集する方法)で採集した昆虫も展示した。

 また、同公園内で昆虫相調査を行う中で、ユニークな発見としてガラス瓶も多数見つかり、当時のガラス容器から人々の暮らしの様子を伝える資料となっている。

 環境調査に利用される、環境指標昆虫のオサムシ科のイブシキンオサムシ(アイヌキンオサムシ)を採取した。

 北海道と千島列島の一部に生息し環境の変化に弱く、同公園のような限られた面積の孤立林に生息している珍しい例として、今後の観察が必要だという。

 能瀬学芸員は、「なえぼ公園の貴重な歴史や自然環境についての企画展を見て、実際になえぼ公園へ行って観察してください」と話した。

 企画展「歴史と自然が根づく場所 わたしたちが見たなえぼ公園」

 総合博物館(手宮1)本館2階企画展示室 4月11日(土)~7月5日(日)10:00~16:00

 冬期入館料一般300円、高校生・市内在住70歳以上150円、中学生以下無料

 4月29日(水)から夏期入館料一般400円、高校生・市内在住70歳以上200円

 5月17日(日)の関連講座ミュージアムラウンジ「大原教授が見たなえぼ公園」は、中止となった。

 ◎総合博物館本館企画展(外部)