9月末に専門医の退職で呼吸器内科が休止となる市立小樽病院(若松1)では、患者数の激減や相次ぐ医師の退職に続き、看護師も大量に退職する動きがあることが、開会中の小樽市議会第3回定例会の特別委員会で明らかになった。
老朽化した市立2病院を統合新築して築港地区に建設するのが現・山田勝麿市長の3期にわたる公約だった。しかし、10年経っても一向に進まぬ新病院建設が、昨年11月に中断されたことで、市立病院内部には先行きの見通しも立たない不安から、病院勤務者のモチベーションが大きく揺らいでいる。
このため、先行きの見通しも立たない市立病院に愛想をつかし、次々と医師や看護師も逃げ出し始めている。
現在、市は、新病院の建設どころではなく、総務省から迫られている現病院の改革プランづくりに追われている。100%地方債頼りの新病院建設計画は、経営破たんしている病院事業では、到底許可が取れない状況となっている。
今は、新病院建設はどこかに吹っ飛び、現病院の改革プラン策定中だが、再編・ネットワーク化協議会もまとまらず、1年間の繰り延べを画策している状態だ。
主要診療科の呼吸器内科の休止は、同病院に大きな影を投げ掛けている。すでに、他病院からのヘッドハンティングも行われており、医師・看護師たちも大揺れに揺れている。
開会中の市議会の予算及び基本構想特別委員会(9月18日)では、「今後、また来年3月には、医療技術課長1名、看護師主査3名、助手1名、またさらに、関係者の話では、病院への不信感、また不安があり、来年には30名程度退職したいという看護師がいると聞いている」(自民党・山田雅敏委員)との質問が行われ、理事者側も、「新病院建設を白紙に戻すことで医師をはじめとするスタッフが離散してくという危惧があり、今後10年先どうなるかという不信感というより、不安がある」と、この事実を認めた。
病院問題では、本社にも、多くのメールが届いている。中でも、最近届いたメールは、この市立病院の状況をつぶさに語っている。
「最近、じいちゃん寂しそうにしているよ。…じいちゃん気落ちして見る影もないし、…だから、わたしは三月いっぱいまで樽病にいて最後までじいちゃんのお相手をします。でも、そのあと、あなたの病院の方で提示してきたその好待遇の条件魅力的だわね。院内の職員も浮き足立ってあの人もこの人も心が乱れているというか荒れています。なにか一つのことを成就する際、最も大切な心構えは、”団結”だと以前院長先生がいわれていたけど、その通りだと思う。いまの小樽病院はバラバラで団結どころではないよ。前の院長を追い出したのは山田市長だけど、今の院長を叩き出すのも山田市長になりそう。 きっと、勝麿さんは人を活かして使えない人なんだわ。…院長って、動物好きだし、暖かくてとてもいい人よ。わたし大好き。 山田市長も院長と共に手を携えて院長を全力で守ってあげればいいのに。あなたも院長室によってじいちゃんを励ましてあげて…」
時折聞こえる会話の端々に、微かだが少し甲高い声で確かに「じいちゃんが云々」との一節一節が樽病の片隅でひと際響き渡る。「じいちゃん」とは、樽病の院長のことである。山田市長の唱導する新病院建設に向けた改革プラン(年末までにできるというが)に全く希望を見出せないまま、かくも気落ちしてはばからない院長に、この職員は深く同情し彼を気遣いつつも、もはや自身の依って立つ将来の基盤確保をせざるを得ない状況下にあるとの認識なのだ。それゆえ、樽病の職員達とそのスカウトのための交渉者との会話の進展にいやまして弾みがつく。
もう既に樽病では廃院を見越して在職している職員、それも幹部級の人材が自ら進んで現在よりも有利な条件での受け入れ先を真剣に模索し探しているのが実態であり、日常茶飯だ。
山田市長の大腸ポリープ切除を執刀し、現在もかかりつけのホームドクターになっている消化器内科の部長の直属の内視鏡室内配下でさえその状態。医師いわく。「君が抜けるなら樽病の消化器内科は全部撤収する」と。これは医師に内緒でみずから電話をかけて各病院に売り込みをはかった右腕の部下の動向に気付いて、彼に、「そんなことになったら俺も辞める」とまで言い及び、心中を吐露して医師は、”泣き言”を吐いている。医師もかわいそうだね。
他の有力病院の人事権を有し、医療関係者の求人をする理事クラスも、鴨ネギみたいに渡来する樽病職員の転職希望者に対して、医療者不足を託つ公的病院にとっても”渡りに舟”とばかり、職員獲得の斡旋に病院挙げて乗り出そうとしている。
この会話の当人たちもその受け入れ先の社団法人が上層部の内諾保証をいち早く与えてくれている。すなわち給与・役職を一階級特進になす優遇保証の確約を樽病職員に取り付けさせている。だから、交渉しているスカウトも、樽病の中で今や将来の見通しを失った優秀な職員を自陣に獲得しようと、再就職先の病院のあたたかいあたたかい受け入れ条件をちりばめて、リクルート(人員募集)に余念がない。
「病院会計の破綻については、人口減少が続く小樽市では、市内各病院の患者数が減少し、予算作成の段階からわかりきった予算を作成した結果生じたものです。予算の作成をしたものは市長の顔色ばかり伺い、市長に対して本当のことが言えない環境が小樽市役所内部にはあります。市長のイエスマンばかりが内部を固めている状態は、日本相撲協会の北の湖体制とよく似ています。貴誌の報道で小樽市の置かれている立場を市民に大々的にお知らせしてください。」
患者・医師・看護師が、次々と逃げ出す市立病院は、すでに総合病院としての機能を果たしていない。方向性もなく、沈没寸前のボロ船からは、船との心中を嫌って、次々と逃げ出す人が相次いでいる。しかし、小樽市には、この船の沈没を止める有効な手立ては全くなく、お手上げ状態だ。五里霧中の“山田丸”は、タイタニック号となるのだろうか。