小樽市総合博物館メルマガ第104号から


 いよいよ今月29日からアイアンホース号の運行、屋外展示車両の公開がはじまります。屋外フィールドでは、フキノトウやツクシもすっかり大きくなり、散歩をするのに良い季節になってきました。是非お天気の良い日に遊びにいらしてください。
 「塩谷丸山展」も20日までです。野山ではフクジュソウやエゾエンゴサクの花が咲き始めており、日を追うごとに野の花の種類が増えています。展示をご覧いただき、春の散策のご参考にしていただければ幸いです。
 博物館メールマガジン104号をお届けします。このメールマガジンは、小樽市総合博物館の最新の情報を皆さんにお届けします。多くの方にご利用いただきたいと思っております。お知り合いにもお勧めください。
☆企画展のご案内
◆企画展「花の山 塩谷丸山の自然展」
忍路・塩谷の海に面してそびえる「塩谷丸山」は、手軽なハイキングコースとして、また信仰の山として古くから小樽市民に親しまれてきました。美しい野の花が咲き乱れる塩谷丸山の自然を、植物標本と写真でご紹介します。
期間 4月5日(土)~20日(日)
会場 本館 企画展示室
料金 入館料
◆特別展「蜃気楼の神秘を探る」
小樽の海岸は「高島おばけ」と呼ばれる蜃気楼が発生することで知られています。小樽の蜃気楼のメカニズム、それを巡る歴史について、多角的な視点からご紹介します。
期間 4月29日(火・祝)~8月18日(月)
会場 本館 企画展示室
料金 入館料
◆ドームシアター特別投影「銀河鉄道の夜」
宮沢賢治原作「銀河鉄道の夜」をモチーフにしたコンピューターグラフィックスの映像です。上映時間は35分です。6月30日(月)まで延長が決まりました。まだご覧になっていない方は、この機会に是非お越し下さい。
場所 1階ドームシアター
料金 入館料の他に、一般200円、小中学生100円 事前に券売所で、入場整理札(各回先着33名)を受け取り、鑑賞券をお買い求め下さい
土日・祝日のスケジュール
11:45、13:30、14:30
平日のスケジュール
11:45、14:00
☆行事のご案内
◆館内イベント「五月の節句」
五月の節句に合わせて、館内で様々な催しを行います。
日時 5月5日(月・祝)午前10時30分~午後3時
会場 本館・運河館
内容 武者人形の展示と記念撮影、茶道体験、風車・折り紙などの製作、竹馬・
独楽回しなどの体験 運河館は武者人形の展示のみを行います
料金 通常の入館料
◆学芸員リレー講座 「工芸品の中の蜃気楼」
蜃気楼を描いた江戸時代の絵皿や浮世絵などをご紹介し、蜃気楼に関わる文化について解説します。
日時 5月11日(日)午後1時30分~3時
会場 本館 研修室
申込 電話、FAX、メールでお申し込みください
定員 40名
料金 通常の入館料
◆羊毛から小物入れを作る
羊毛を石けん水につけてフェルト地を作り、小物入れに仕上げます。
日時 5月24日(土)午後1時30分~3時30分
会場 本館 実験室
申込 電話、FAX、メールでお申し込みください
定員 20名
料金 入館料と材料費800円
◆特別展関連事業「蜃気楼教室」
高島の海岸で、蜃気楼の観察方法についてご紹介します。
日時 5月25日(日)午後1時30分~3時30分
場所 高島の海岸
集合場所 高島3丁目バス停
定員 20名(小学生以下は保護者同伴)
料金 50円(保険料)
申し込み 電話、FAX、メールでお申し込みください 
☆デジタルプラネタリウム 今春の番組
春の星座と土星について学芸員による解説、オリジナル番組「春の星空動物園」の上映をしています。投影時間は35分間です。6月16日まで
時間 午前12時35分(土・日、祝日のみ)、午後3時45分
場所 1階ドームシアター
料金 入館料
定員 先着33人
☆チャレンジラボ 今月のメニュー
4月29日まで
「スーパーボール作り」お湯の中に入れるとやわらかくなるプラスチックでスーパーボールや好きな形をつくります。
材料費 100円
5月3日から
「偏光万華鏡」
偏光板を使った工作。万華鏡のように模様や色が変化してみえます。
材料費 150円
日時 土・日、祝日の午後2時 から30分程度
場所 本館 科学展示室、または実験室
☆お知らせ
◆4月29日から夏期料金開始 およびアイアンホース号の運行開始
本館の入館料が夏期料金になります。また、冬の間お休みしていた蒸気機関車アイアンホース号の運行と、屋外の展示車両の公開を開始します。
入館料(本館) 一般400円 高校生および市内在住の70歳以上の方200円 中学
生以下無料
運河館はこれまでどおり、一般300円 高校生および市内在住の70歳以上の方150
円 中学生以下無料です
アイアンホース号の運行時間
平日:午前11時15分、午後1時15分、午後3時15分
土日・祝:午前11時15分、午後1時15分、午後2時15分、午後3時15分
◆祝日の開館と、振り替え休館について
4月29日と5月6日は火曜日ですが、祝日ですので開館いたします。その振り替えとして、4月30日(水)と5月7日(水)は、休館にさせていただきます。
祝日による開館日:4月29日(火)、5月6日(火)
振り替えの休館日:4月30日(水)、5月7日(水)
☆正見桜花爛漫時―サクラの季節がやってきます。
 今年の春はかなり早足でやってきています。すでに手宮公園の雪もなくなり、手宮洞窟の横に流れる「滝」ももはや見ることができなくなりました。
 総合博物館から見える山の雪も次第に小さくなっていき、茶色の景色の中にすこしづつ薄い緑がみえてきています。そんな季節には身近な山や丘に出かけ、春の息吹を感じたくなるものです。今回の企画展「花の山 塩谷丸山の自然」はそんな山歩きの前にお立ち寄りいただくと、より楽しみが増すのではないかと思います。
 「自然」の花のことは、企画展にまかせるとして、人の手によって植えられた花の代表、サクラのお話を少し紹介させていただきます。
 先月まで行っていた特別展「明治小樽徒然」は、明治から大正にかけて稲穂小学校の校長を務めた、稲垣益穂ののこした「稲垣日誌」を軸にしたものでした。この稲垣先生は好奇心旺盛な方で、さまざまな出来事、事象を日記に記録しています。
 稲垣先生の趣味は朝顔の栽培で、明治後半、何度目かの朝顔ブームがあり、その影響でしょうか、毎年、本州から種を取り寄せては栽培を試みますが、なかなかうまくいかない様子が描かれています。そんな稲垣先生の目に映った、小樽のサクラの名所を日誌から拾ってみます。
 明治後半から大正にかけての時期といえば、小樽が爆発的に発展していく時期で、本州資本の大会社の支店が次々と進出し、また多様な商店が盛んに影響をしている時代です。この頃の小樽を紹介した文献 『小樽区外七郡案内』(明治42年発行)には「小樽は是れ新開の地、其の歴史を尋ぬるに又僅に四十余年に過ぎざるを以って、古跡の見るべきなく、名所として中外に表示するに足るの地なしと雖も、地や山を負ひ海に面す、従って風光明媚の地少なからず」と記されています。そして小樽の自然の美しさについて「若し夫れ皐月春己に枝頭に充つる時、梅桜桃李一時に研を競ふの時を思はゞ吾人は本土人士に誇るの一事あって存ず、看よ春は己に十二分なるに尚ほ遠山残雪の存するあり、坐らにして月雪花を愛し得るの地、本土何れにや存する」としています。
 そんな小樽ではじめての春を迎えた稲垣先生は、龍徳寺を訪れ「中学校の下にある龍徳寺の境内には数本の梅や桜が混栽してある。今は満開でなかなか見事であった。」(明治36年5月12日)と記しています。ただ、四国出身の目には明治30年代後半の境内はまだ十分ではなかったようで「竜徳寺の桜花は如何であるかと其方へ廻って見ると、果して丁度よき見頃であった。桜はいづれも若樹であるし、そして重弁であるから何となく品位は無いけれども、今を盛りに咲き乱れた有様は決して悪しからず、竜徳寺は境内も相応の面積があるし、おもなるは畑の様になって居るけれども、其間には築山もあり泉水もありて一面に桜樹が点綴して居るので、今から十年も経ればよほどよき遊び処になるであらう。」(明治37年5月16日)とも書いています。
 稲垣先生の指摘どおり、昭和の初めになると龍徳寺境内のサクラは絵葉書にも登場するほどの名所となっていきます。大正時代には「桜樹は区内唯一の老木で、爛漫たる花時杖を曳く士女が多い」(大正4年発行『小樽』より)と記載されています。現在、龍徳寺の境内はかなり姿を変えていますが、保育所側にあるサクラに当時の面影を偲ぶことができます。
 現在、花見の場所として名前のあがる手宮公園については、まだ整備されていなかったためか、記述が見当たりません。一方、花園公園は、学校、住居の近くであったこともありしばしば登場します。
 花園公園の整備は明治33年からはじまり、稲垣先生の着任当時はまだ整備中でした。したがってはじめは「公園付近の桜は殆と満開の様である。樹木の数が少いから、トント花見に出かける様な処も無い。」(明治37年5月7日)と記されています。稲垣先生にとって小樽のサクラに欠けているものはどうも大きさと風格であったようで「小樽地方の桜は、地方の新しきに準じて何処の桜樹を見ても若樹ばかりで見栄えが無い」(明治38年5月19日)としています。従ってまだ「僅に一二間」の大きさしかない花園公園のサクラはなかなかお気に召さなかったようです。
 しかし、次第に成長し枝を伸ばしていくサクラを見て「公園ノ桜樹ハ移植後年浅ク幹枝尚稚弱ナレドモ、今ヲ盛リト咲キ乱レタル様棄テ難キ風情ヲ呈セリ。今四五年モ経チタランニハ、落葉松ノ緑色モ濃厚ヲ加フルナルベク、之ニ交リテ白花ノ点綴スルナド必ズ一段ノ風致ヲ得ルニ至ルベシ。」(明治40年5月15日)「公園正門付近晩桜今ヲ盛リニ咲キ乱レ、桃花、紅梅亦各妍ヲ争フ。美観名状スベカラズ。今ヨリ十年ヲ経バ北海道ノ桜見ノ名所ハ円山ヲシテ独リ其名ヲ檀ニセシメザルニ至ルベシ。」(大正8年5月20日)と変化していきます。
 昭和に入ると花園公園はサクラの名所として著名になり、公園のサクラだけの絵葉書シリーズが何種類かでています。稲垣先生が期待した、札幌円山をしのぐ名所といえたのかははっきりしませんが、小樽の春を彩る場所に変化していきます。
 
 ただ、稲垣先生はこの「人工の自然美」ともいえるサクラに対して、別の評価をしています。「サレド人工ハ何処マデモ人工ナリ。真ニ風景ヲ愛スルモノハ赤岩ノ崖上ニ眺矚ヲ恣ニシ、真狩ノ河畔ニ紅葉ト戯レザルベカラザルナリ。」(明治40年5月15日)と書き、高知の自然の中で育った体験からも、植樹されたサクラの満開の光景を至上のものとはかんがえていなかったようです。
 スギやヒノキの人工林は、人間の作った光景でその意味では「歴史的遺産」といえます。「自然」「自然に親しむ」という言葉を考える際にこのことをもう一度考えるべきではないでしょうか。今回の企画展の舞台となる塩谷丸山の植生にも、当然のことながら人間の影響があります。そんなことを考えながら今年のサクラを楽しみに待ちたいと思います。
 なお、「稲垣日誌」には児童に対する注意として「途中にて桜実をとるの不都合なること」(明治37年6月10日)をあげています。「市内で見られるサクラに実がなるのか?」と植物担当の職員に聞いたところ「当然なります。サクランボより早い時期にとても小さい実ができます。」とのことでした。「ではそれは食べれるの?」という質問には「さあ」ということでした。むしろいわゆるミザクラではないかとのことでした。札幌では街路樹として植えられたことあり、小樽でも庭木として栽培されていたようです。
 ちなみにこの訓示の20日ほど後、実際に手宮の邸宅に入り込んで「桜実」をとろうとしたこどもに主人が発砲する事件がおきています。
 
 春の花の写真をみて思いついたことを「稲垣日誌」をめくりながら書いてみました。「稲垣日誌」第28巻はボランティアのみなさんのご協力で先月末完成しました。いろいろな使い方ができる資料です。ぜひみなさんもご一読ください。(学芸員 主幹 石川直章)       転載許可済
 小樽市総合博物館

本館
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小樽市色内2-1-20
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FAX.0134-33-2523
休館日 年末年始のみ
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