総務省の公立病院改革ガイドラインが、昨年12月21日に決定し、各自治体に通知された。これにより、各自治体は、2008(平成20)年度中に、大胆な改革プランの策定が迫られることになった。
小樽ジャーナルでは、ガイドライン決定が、小樽市の病院問題にどのような影響があるか、2008年1月に入り、改めて、総務省・公立病院改革懇談会の長隆座長の話を伺った。
「小樽市が、まずやらなければならないことは、ガイドラインの柱のひとつである再編・ネットワーク化で、小樽市のように、官・民の病院が乱立しているところの公立病院は、民との役割分担を明確にし、規模縮小をしなければならない。
小樽市の例は、懇談会でも具体的に話に出してある。公立病院改革は、北海道では、小樽市が”関ヶ原”だ。国の財源には限りがあるので、財政支援措置は、平成15年以降発生したものが対象で、平成15年以前に出来た小樽市の44億円の不良債務は対象にならない。当然でしょ。44億円の不良債務は、今年3月か来年度中に返さなければ、いけないということ。平成20年度に、ベッド数(病床率)や人件費比率など、数値目標を立てなければならない。
小樽の病院の現在の病床数は、800床を超えており、過剰過ぎる。思い切った削減が必要だ。30%カットの250~300床位の削減を見込んで、新年度の予算をつくらなければならない。国の財源は限られており、小樽のように資金計画がクルクル変わるようなのでは、話にならない。ふざけているところはダメで、努力しているところに財政措置をするということ。
小樽市がやらなければならないのは、44億円の不良債務を病院本体の利益で消していくことだ。単に赤字を穴埋めするための、合理性がない一般会計からの繰出しは認められない。まあ、小樽みたいに官・民の病院が乱立しており、巨額の赤字を垂れ流し続ける公立病院は、税金投入せず、廃止すべきということだ。
病院事業では、病院経営の資金不足比率(流動資産から流動負債を引いた比率)が、20%を超えると早期健全化計画を求められ、平成20年度から外部包括監査法人が入ることになる。小樽は、20%を超えているだろうから、イエローカードを出されることになる。
小樽市は、平成22年度までの3年間で、収支均衡する数値目標を立てた改革プランをつくらなければならない。小樽の病院が生き残ることが出来るとすれば、4月からでも、非公務員型の独立行政法人にして、病床数や人件費の削減でダウンサイジングして、黒字化することしか方法はない。
不良債務を抱え、ふざけた資金計画を出すような市が、豪華病院を新築することは認められない。平成22年度までに不良債務を解消して、平成23年度以降に起債申請することはあり得るかもしれないが、まあ無理でしょう」。
また、長隆座長は、ガイドライン決定後も、自社のホームページ上で、小樽について言及していた。
12月30付でアップされた論評では、『小樽市長の・・病院の赤字を出さないために一般会計から繰り出したうちの一部が財政支援措置の対象となる・・という解釈は誤り・・・小樽市のように 札幌まで至近距離・かつ民間病院が多数立地し重複・競合が指摘されている場合 大胆な改革が前提である。
公立病院改革ガイドライン 第2
2 改革プランの内容
(2)② 1)各公立病院に共通する事項
一般会計等からの繰り出しは、独立採算原則に立って最大限効率的な運営を行ってもなお不足する、真に已むを得ない部分を対象として行われるものであって、現実の公立病院経営の結果発生した赤字をそのまま追認し補填する性格のものでないことは言うまでもない!』としている。
2008(平成20)年度の小樽市は、新病院の建設どころではなく、現病院の抜本的な改革を数値目標で示した改革プランの策定が迫られることになった。小樽市病院事業の巨額赤字は、新谷前市政の1993(平成5)年から1999(平成11)年にかけて作られたもの。それを継いだ山田市政は、各年度をまたぐ一時借入金で相殺する赤字隠しを、長年にわたり続けていた。しかし、これも、国・道の指摘で、2006(平成18)年度決算で、43億1,900万円を不良債務として表に出すことを余儀なくされた。
この不良債務43億円が、今後の病院事業経営に大きな足かせとなり、公立病院改革の財政支援措置の特例債の対象ともならず、このまま病院事業と一般会計に大きな暗雲を投げ掛け続けることになる。
2008(平成20)年度は、まさに小樽市の病院問題が大きな岐路に立たせられることになり、どのような舵取りをして市民に納得できる解決策を示せるか、行方定まらぬ山田市長の”手腕”が大きく問われることになる。
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