戦時中に住吉神社(住ノ江2-5)境内から、道一つ隔てた境外の空地に追いやられていた、俳聖・松尾芭蕉の句碑が、約60年ぶりに神社境内に“里帰り”を果たした。
これは芭蕉句碑のあった場所が、参拝者用の駐車場に整備されたために伴う措置で、戦時中に境内から境外へと移されていた句碑は、約60年ぶりで、住吉神社境内へ“里帰り”することになった。
松尾芭蕉の句碑は道内では、松前町と函館と小樽の3つのみを数える貴重なものという。60年ぶりに“里帰り”した芭蕉句碑は、同神社社務所向いにある田中五呂八句碑と並んで置かれている。
「梅の香に のっと日の出る 山路かな」と刻まれた句碑はかなり風化しており、字も読みづらく、芭蕉の侘び寂の世界を現出しているようだ。並び建つ川柳作家の田中五呂八の「人間を 掴めば 風が手にのこり」の句碑は、黒御影石に刻まれ、字も大きく読みやすい。
2つの句碑を並べたことについて住吉神社では「戦時中は、文学などは軟弱なものとの非難が軍部から上がり、境内にあった芭蕉句碑を境外へ移したと聞いている。昨秋、参拝者用の駐車場の造成を機会に境内に戻し、緑の木陰の下にある、田中五呂八句碑と並べて置くことにした」という。
現在2つの句碑は雪をかぶりながら、肩を並べている。
写真左が、境外にあった頃の句碑、写真右は、境内に移された句碑。
「梅の香や 道を越えるに 六十年」(詠人不知)