「私の絵を見てどのように感じましたか」(高橋好子氏)。小樽在住の現役美術家・高橋さん(80)は、60年の活動の中で具象から抽象へと表現方法が変化した自身の作品を見ながら、ギャラリートーク(市立小樽美術館)に集まった約50人の聴衆に問いかけた。
このギャラリートークは、「小樽美術家の現役シリーズ・高橋好子展」(7/28~9/17)開催中の市立小樽美術館(色内1)2階展示室で、9月8日(土)13:30~14:30に行われた。
高橋さんは、1927(昭和2)年、小樽で生まれた。戦後まもなく水彩で、市展や全道展などで入選を果たした。教師だった高橋さんの最初のモチーフは、目の前の小学生だった。1955(昭和30)に油彩に転じ、具象から抽象へと作品は変貌した。
「同じ人が描いたとは思えないでしょう」と、ギャラリートークでは、60年間の美術家活動ではなく、作品表現が変化した美術活動の後半に、焦点が当てられた。
作品の変化は、1978(昭和53)年のサロベツ原野での体験だった。亡くなった姉と二人で旅した夏枯れの湿原で、歩き疲れて大の字になって倒れた。疲れ果ててぼんやりと頭上の空を凝視すると、「空の中に溶け込んで、白雲と一つになり、人間も植物も動物も水も風も、一切のものは流動している」と実感した。
ごく当たり前の空と雲の自然現象から流動感を感じ、絵でどう表現すればよいのかと新しい挑戦が始まったという。これが抽象作品の始まりで、高橋さんの代表作でライフワークとなった連作「空(くう)」の誕生となった。
具象から抽象へ表現は違えど、「これまでずっと“いのち”をテーマに置いて描いてきた。幼い弟の死から追求した」と、いのちの真実を求めて今も歩み続けている。
「小樽美術家の現役シリーズ・高橋好子展」は、9月17日(月)まで。
◎市立小樽美術館HP