小樽の平野井いとう養魚場(桜5)の人工池で、自然産卵・受精したイトウの卵約500粒が、このほど孵化(ふか)し、世界初の快挙ではないか、と関係者を驚かせている。(左の写真をクリック)
人工池で自然産卵・受精する珍しい光景が現れたのは、4月29日のこと。人工池で自然産卵することは度々あるというが、「人工池で受精することは非常に珍しい。ふ化することなどは、聞いたこともない」(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター七飯淡水魚実験所・木村志津雄所長)と高く評価している。
同養魚場の平野井篤さん(70)は、4月29日早朝に池の中の受精卵を発見。すぐにポンプで吸い取り、人工のふ化水槽に移した。死んでしまった卵を一緒にしていると、ほかの卵を侵食してしまうため、死んだ卵を取り除く作業を毎日続けた。
ふ化までには、10℃の水温で33日ほどかかると見られていたが、22日間経った5月21日(月)に、4尾が最初にふ化した。さらに、今年初の夏日を記録した5月22日には、水温が一気に18℃まで上がったことから、ふ化が早まり、23日(水)までに、なんと500尾もがふ化した。
イクラ色の卵黄から生まれた約1㎝~1.5㎝の稚魚は、黒い二つの目玉をハッキリと見せながら、ピンク色の体を揺らせていた。卵の時には出られなかったふ化盆の網目から、大きな水槽の新しい世界へ自力で抜け出していた。卵黄がなくなる10日後には泳ぎ始め、浮上稚魚になる。
平野井さんは、「これは本当に珍しいこと。文献や資料では見たことも聞いたこともない。超ビッグなことで、世界初ではないか。10年・20年経ってやっとここまでになった。本当に嬉しい。これだから、イトウには魅力があって幻の魚と言われるんだ」と喜んでいた。
同養魚場では、一昨年に人工授精が初めて成功して、小樽産のイトウが生まれた。今年は自然産卵・受精という非常に珍しい形で、小樽産の幻のイトウが誕生した。
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