今年3月のJRダイヤ改正で廃止された、JR張碓駅の解体撤去工事が進み、既に海側のホームが重機により解体撤去されている。
小樽市張碓町にあったJR北海道の函館本線・張碓駅は、前は日本海、後ろは断崖絶壁に挟まれていた。駅への進入路が全くなく、自動車や徒歩でも到達するのが極めて困難で、全国有数の“秘境駅”として知られていた。駅到達の難易度から、一度は訪問したい駅として鉄道マニアの好奇心をかきたてていた。雪解け時期には、断崖から落ちる幻の“張碓の滝”も出現することもあって、“秘境駅”としての神秘性を深めていた。
張碓駅は、1905(明治38)年10月に、銭函~朝里間の駅として開業。当初は貨物駅として、鉱石や砕石を運んでいたといわれる。1978(昭和53)年には無人駅となり、1990年からは夏季限定の臨時停車駅として、海水浴客が利用していたが、1998(平成10)年に通年休止駅となって、2006(平成18)年3月18日から廃止駅となっていた。
通年休止駅となってから、鉄道フアンの間では、駅への到達難易度のトップクラスにランクされ、山側や海側からや線路伝いで訪問するマニアが後を絶たず、死亡事故が起きたこともあり、解体撤去作業が急がれていた。
JR北海道では、今夏7月から重機を運び込む進入路取り付け作業に入り、解体工事を進めていた。現在では、既に海側のプラットホームが解体され、その姿を消している。山側のホームには駅舎があるが、これもまもなく跡を消す事になる。
同駅には、鉄道の歴史を刻んだ「義経隧道碑」と「第1号機関車義経号の鈴」の鉄道記念碑があるが、これは撤去せずにここに残される事になっている。
道内初の鉄道に、1905年に開業した張碓駅が2006年3月に廃駅とされ、夏から始まった解体撤去工事で、1世紀に及ぶ歴史に幕を引き、まもなく“秘境駅”もその姿を永遠に閉ざすこととなった。
◎張碓