小樽独特の街並を形成する石蔵の保存や活用について考える「小樽石蔵シンポジウム」が、9月16日(土)14:00から16:30にわたり、小樽運河プラザ3番庫(色内2)で開催された。主催はNPO法人小樽民家再生プロジェクト(中野むつみ代表)。
会場には約200人の市民らが訪れ、立ち見が出るほどの盛況ぶり。石蔵に寄せる関心の高さが伺われた。司会を務めた同プロジェクト石井伸和理事は、「こんなにたくさんの人が集まってくれたことは大変ありがたく、特に今回は、石蔵の所有者も30人ほど参加してくれたことは朗報だ」と述べた。
基調講演は2名の講師により行われた。北海道職業能力開発大学校特別顧問の駒木定正氏は、木骨石造倉庫の歴史的な背景などについて講演を行った。木骨石造倉庫は、木造の骨組みにサイディングのように小樽軟石と呼ばれる石材を鎹(かすがい)等で貼り付けて施工したもので、火災に強く、建築費用も安価であることから、小樽に残る倉庫の多くに採用されたものだ。
同氏は、小樽独特のものと思われている木骨石造倉庫は、東京や九州でも作られていたが、耐震性に弱く、本州では地震等で倒壊して失われ、小樽では震災に遭わず多くが残ったことで、小樽らしさを形成する結果となったことについて話した。また、活用に当たっては、しっかりした耐震補強が必要であることも述べた。
小樽市総合博物館特別研究員の竹内勝治氏は、市内の全ての石蔵や石造倉庫を独自に調べたことについて講演を行った。2013(平成25)年の調査で354棟だったのが、今年の8月末では325棟に減り、この4年間で29棟が失われていることが報告された。また、石蔵を修復したくても、肝心の小樽軟石が手に入らない現状などについても述べた。
パネルディスカッションでは3名のパネラーがそれぞれの専門分野に関して話をした。
旧小樽倉庫を小樽ビールに改修施工した経験などを有する、㈱A&Aリフォーム代表取締役で一級建築士の廣谷昭氏は、来年1月施行される民泊法に触れ、石蔵を活用して民泊を行うための法的規制やどういった設備をしなくてはならないかなどについて話した。
市内で、30年間にわたり石蔵を使ったバーを経営する佐藤孝氏は、レコードの音と軟石との相性が良く、石蔵が音響に優れることや、構造が単純なため内装の改修が容易なこと、温度が一定に保たれる点など、軟石の石肌が非常にアート的であるメリットを話し、ノウハウはいくらでも提供するので特に若者には石蔵を活用してほしいと述べた。
建造物の解体工事などを引き受けている㈱栄伸開発工業代表取締役の三國順也氏は、石造倉庫などの解体で、通常、瓦礫として処分してしまう石材の保存や活用などに力を入れており、吸水性が強く風化が進みやすい軟石の保存方法や、温泉の床・ベンチ・花瓶など雑貨への活用例を紹介した。
参加者は、熱心に講演やパネルディスカッションに耳を傾け、会場からは、「オブジェ作りなどに軟石を使いたい。石を手に入れる方法は?」などの質問も発せられた。
同シンポの最後に、同プロジェクトの石井理事は、石蔵の保存活用などを市民ぐるみの活動に盛り上げていくための「小樽石蔵再生会」の発足を提案。会場からは賛同の拍手が贈られた。登録者には、今後、小樽石蔵再生会の開催案内などが送られる。
問合せや登録は、0134-31-3777・web 小樽民家再生プロジェクトへ。
◎NPO小樽民家再生プロジェクトHP