自民党の濱本進・中村吉宏両小樽市議会議員が、11月10日(木)10:00から、自民党小樽支部(花園2)で、両議員が提訴された民事訴訟が取り下げられた経緯について、記者会見を行った。
問題の裁判は、平成27年12月に開催された小樽市議会第4回定例会の予算特別委員会において、両議員が、市の貸出ダンプ制度の制度改正案が、森井秀明市長の後援会幹事長である荒木和廣氏が、代表理事になっている道都総合事業協同組合への利益誘導が疑われることを指摘したことに対し、荒木氏から名誉と社会的信用を棄損されたとして、平成28年4月22日に損害賠償と謝罪を求められたもの。
中村議員は、制度改正案は制度改正前と比較すると同組合へ65.9%増の大きな利益をもたらすことを挙げ、濱本議員は、荒木氏が森井市長の政治団体に84万円を寄付している事実を挙げた上で、それぞれ利益誘導が疑われることを指摘していた。
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両議員の代理人である鹿角健太弁護士は、「利益誘導を断定した発言はしておらず、そもそも名誉棄損にはあたらないと反論していた。また、議員は特別職の地方公務員であり、国家賠償法第1条第1号により、『公務員がその職務を行う中で、他人に損害を加えたときは、公共団体が賠償する責任がある』と規定されており、議員個人ではなく、市を提訴すべきものであることは原告側に指摘していた」と話した。
同弁護士は、原告側が急に被告を議員個人から市に変更する訴えの変更があり、それに対し、裁判所が今回の裁判の中で任意的な被告の変更は認められない判断をしたので、8月31日付けで原告が裁判所に訴訟の取下書を提出し、9月2日に裁判所から取下書を受け取ったことを明らかにした。
訴えの取り下げには被告の同意が必要であるが、2週間の期日で意思を表示しなければ同意とみなされる。今回、両議員は、取り下げた理由について原告側に書面で説明を求めたが応答は無かったため、原告に対して積極的に同意の意思を表示しなかったことから、9月17日に、みなし同意により取り下げが確定した。
その後も、両議員は原告に対し、取り下げの理由について説明を求めたが、今日まで応答がないことから、取り下げが確定してから時間が経過したことから記者会見を行った。
濱本議員は、「この裁判は議会内での発言が前提になっており、大きな括りで見ると、議会内での発言を抑制するところがある。これはある意味、議会制民主主義を否定するような裁判だと認識している。最終的に取り下げたということは、我々の実質的な勝訴だと認識する」と答えた。
また、中村議員は、「我々も、市政の場で、市民の目線でチェックや、市政発展のための様々な提言をしていく機能を果たすために、確認しながら公の場で発言している。今回、一方的に提訴して、一方的に取り下げることに何も説明がないことは、乱訴に近いものがあるのではないかと憤りも感じる。言論を封鎖するような行動はあってはならないと思う。今回の発言も、情報の確認をし、市から発言があったことに対し、我々が取り上げていった経緯がある。今回に関して不適切な点は無かったと思っている」と話した。
一方、原告代理人の伊東秀子弁護士は、「当初、荒木氏からは市長に迷惑をかけないように、議員個人を提訴することを求められ、判例もあったので民事訴訟として提訴したが、裁判所から被告を市とする通常の行政訴訟にするように指揮があった。それでいったん取り下げをしたが、来週中には訴状を裁判所に出す予定だ」としている。
「行政訴訟になれば、請求原因は、市議会議員が個人の名誉を侵害するような質問をして良いのかどうかといった、非常に公的なものになってくる。また、市民も巻き込んだ形になり、税金から損害賠償金を払わざる得なくなることが問われる状況になる。議員は特別職の公務員だから、たまたま市が被告になる訴訟の形をとるが、市は議員に対し求償することになるだろう」と話しており、次は市を相手に訴訟が提訴される様相となっている。
森井市長が後援会幹事長に利益誘導を行ったのではないかとの議会質問を巡っての訴訟で、裁判所からの指揮で、行政訴訟に変更を求められ、本訴訟を取り下げたたことは、これまでの原告の主張を否定したもので、原告にとっては重い判断となった。
◎国家賠償法第1条第1号