平成27年度の人事異動における市長の法令違反に関する小樽コンプライアンス委員会(山口均委員長)からの調査結果の報告について、8月9日(火)、市役所(花園2)2階第2委員会室で、総務常任委員会(山田雅敏委員長)が開かれた。
平成28年3月14日付で、コンプライアンス委員会が受付をした「平成27年度人事異動における市長の法令違反」については、平成27年度6月の人事異動において、ほとんどの昇任は内申書などの書面に基づかずに行われ、地方公務員法に違反するおそれがある事実が認められた。同委員会は、匿名とあったが、内容から職員と推定し、公益通報として受理した。
その後、4月13日に同委員会が開催され、翌日から調査を開始した。市長からの意見聴取を含め4回の委員会を実施し、7月20日付で、「本件人事は、法令に違反するおそれがある事実に該当する」と認められ、通報対象事実があったとされた。
公明党からの要求により、平成27年度の人事異動に関わった現職の幹部で当時の迫俊哉総務部長・阿部一博総務部次長・林昭雄総務部職員課長の3人が参考人として出席。
当時の人事異動に関して、市長は総務部職員の話に一切耳を貸さず、内申書などの書面によらず、「人事は私が決める」との一方的な態度で押し切り、これまでに例のない人事異動を行ったことが明らかになった。
同委員会は、13:00からの開始を予定していたが、事前の理事会で決定していたにも関わらず、委員会の出席者として現職にない者を理事者として出席させ、「責任ある答弁になるのか?」との疑義があり、その調整のため2時間遅れで始まり、自民党・公明党・共産党・民進党・新風小樽が質問した。
自民党・山田雅敏議員は、「人事担当者が原案を作成し、市長に見てもらうやり方であったが、第三者に人事異動の情報が漏れていたとしたら、別の問題が浮上する。実際にはなかったことを願っているが、問題が明らかになると、市長にそれなりの責任が出てくる」と釘をさした。
公明党・斎藤陽一良議員の質疑で、3名の参考人が出席した。これにより、森井市長就任後、人事異動までの1ヶ月間、これまで明らかにされていなった当時の状況が語られ、市長の人事異動のお粗末さを裏付ける結果となった。
当時総務部長の迫氏は、中松市長の下で作成した管理職の人事案を森井市長に渡し、人事の打ち合わせを要求したが、「各部からの勉強会がスムーズに進まず、勉強会を優先したい」と言われ、土・日でも打ち合わせをしたいと伝えた。5月28日に市長案が示されたが、「総務部長や人事担当との打ち合わせは一度もなく、打ち合わせをしたのはこの後で、市長案について疑義があり、それを正すためだった」という。
人事案を受け取った時の迫氏は、大規模の異動と記憶。「市長は就任後、まだまだ分からないことが多く、勉強させていただきたいと言いながらも、この大規模の異動では、短期間にすべての人事を掌握したのかと問われかねないので、大きな人事は1年後でも良いのでは?」と伝えた。
当時職員課長の林氏は、5月21日に職員課で市長から人事案を受け取り、有り得ない内容に驚き、当時は退職者で、のちに参与になった堤正和氏の名前があったことも明らかになった。
人事案を受け取てから初めて市長と協議し、疑問に思った迫氏は、「水道局長の異動は任期3年のため難しいことや、体調を崩した女性の管理職・港湾室の幹部職員など3名の異動は業務の停滞を招くこと、派遣職員についても、派遣先と協議せずに一方的に示し、参与については論外」と伝えたという。
当時の阿部総務部次長は、人事の基本的な考え方を伝え、「組織を維持する上で、人事の基本的な考え方を無視することは組織が保たない、職員が耐えられなくなる恐れがある」と伝えた。また、「市長が示す原案には、自身の(後援会)関係者を優遇している昇任がみられる。人事担当部門の責任上、このような異動案は承服できない、内申書を基にした総務部案をもとに、考え直してほしい」と伝えたが、市長は「人事は私が決める」と、一方的に打ち切ったという。
結果的には、市長の人事案通りに進められ、人事部局が作成した異動案は無視をされ、能力の実証を欠いた人事が実行された。しかも、自身の後援会幹部の職員採用も、市長の独裁で強行されたことが明らかになった。
小樽市顧問弁護士の伊藤弁護士によると、「必ずしも内申書などの書面によらなくても、一定程度検証したものであれば違法性はない。コンプライアンス委員会も司法機関ではないので判断を留保した」とした。
斎藤議員は、「事実は限りなく黒で、委員会の内容を真摯に受け止め、自ら潔白だというのなら、司法の判断を受けるべき。職員が告発したら、それを封じる指揮をしないこと」を求めた。
市長は、「司法の判断は考えていないし、(訴えることは)国民の権利なのでここで触れるつもりはない」と答弁。「責任問題も発生しないし、自ら責任も取らない」との態度だった。
是正措置だけで良いのか?の問いに、市長は「真摯に受け止め、改善しより良い形にすることが市長の責任。職員の意識醸成に繋がるような人事制度に結びつけることが、私の一番重要な責任の取り方である」とした。
また、市長は、「専門性を高め同じ部署にずっと居続けることも重要であるが、私は、もっと様々経験を持つこと、専門職が固定的でマンネリ化の傾向があるとの視点を持っている」と述べ、経験していないのに適材適所と判断したのは、「過去の経験を見定め、適応でき高められる可能性があるのでは」と回答。具体的な例としては、「この場において示すことは影響等が考えられ差し控えたい」とした。
早期退職、降任などが起こった市長の責任について、「無理やり行なったことはなく、コミュニケーション不足はあったのかと思う。人事の責任は背負っている。降任者が出たことについての責任はある。昨年の人事においては1年間待つことは判断できなかった。職員とコミュニケーションを高め具体的な制度設計を検討したい」と述べた。
市長就任1ヶ月での大規模人事異動は、結局、市を退職していた後援会幹部を参与として採用する狙いが当初より明らかで、「参与人事は論外」と指摘されていたにも拘らず、森井市長の独断専行で行われた。
この参与人事は、市議会を巻き込み大きな問題に発展し、結局、森井市長は、泣く泣く参与の首を差し出さざる得なくなり、就任1年目の足跡に大きな汚点として残った。今後、市職員が、この森井人事の司法判断を求めることも考えられ、先行きが注目される。
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