耐震偽装が明らかになった小樽市築港の賃貸マンション199戸からの、入居者の“脱出”が4月23日(日)から始まった。
“脱出”が始まった同マンションは、浅沼良一・二級建築士(47)の関与が発覚し、耐震強度不足が18日(火)に確認された。小樽築港駅前の単身者用ワンルームタイプの賃貸集合住宅「小樽ベイサイドシティ7・8」(築港12)で、RC造の地上10階建。1998(平成10)年3月から1999(平成11)年2月にかけて建設された。
同マンションの設計・施工を行った「鹿島建設株式会社札幌支店」が、浅沼二級建築士の偽装物件のニュースを受けて調査した結果、下請けの設計事務所が浅沼二級建築士に構造計算書を外注していたことが判明した。このため、耐震強度が通常よりも46%足らず、その対応に追われていた。
同社では、震度5強程度の地震で倒壊はないとしているが 「耐震補強工事に伴う転出入に関する経費や現在の家賃との差額を負担する」と、連日に渉る住民説明を開始した。
22日(土)現在で、説明会には約170戸の入居者が来ており、残り約20戸の入居者のポストに入れた案内書もなくなっていることが確認されている。入居者は、市内での引越し希望が多い。このため、小樽市内の賃貸マンションで、約199戸もの入居者の対応できるかが問題となっている。
23日(日)には、早くも同マンションから2人の脱出者が現れた。2人とも単身で入居しており、すでに転居を予定していたため、午前と午後に耐震偽装マンションからの引越し作業を行った。
午前中に引越した男性公務員(30)は 「色々な物件を探して、引越しの予定だったときに、耐震問題が発覚したので早急に決めました。自分がもともと転居する予定でなくても、ここのマンションには戻って来たくない」。
午後に引越しした女性は 「5年くらい住んでいましたが、嫁ぐことになっていたので、引越しは考えていました。引越ししないとしても、ここへはもう戻って来たくない」と、両手にバッグを持って去っていった。
鹿島建設によると、23日(日)の引越しは、2名以外は予定されておらず、約199戸の転居先探しへの対応に追われている。入居している女性保健師(23)は 「引越しの日にちは、まだ決まっていません。マンションを移ると、今度は勤務先が遠くなる。子供いる人は環境が変わるし、大変ですよね。本当にうんざりしています」と、早急の対応を求めている。
同マンションからの本格的な“脱出引越し”は、この1ヶ月間程度で行われることにしており、全入居者を退去させた後、4ヶ月程度で耐震補強工事を行うことにしている。しかし、入居者や脱出者は、一様にこのマンションには戻ってきたくないと、強い拒否反応を示しており、日本を代表する大手建設会社のズサンな設計施工が改めて問われる事態となっている。
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