蜃気楼シーズン到来! 春の風物詩"高島おばけ"


 小樽の春の風物詩と言われる「高島おばけ」が出現する、蜃気楼シーズンが到来した。
 高島おばけとは、小樽から望む対岸の石狩湾の建物などが、バーコード型や大きく見えたり、時には縮んで見えたりする大変珍しい現象。長年の研究により、出現にはいくつかの条件があり、晴れた日で、気温が海面温度より10℃くらい高く、穏やかな南風が吹くなど、発生条件が揃わなければならない。
otarumirage.jpg冬に多く見える浮島現象は下位蜃気楼のことで、これとは異なる上位蜃気楼を小樽では、”高島おばけ”と呼んでいる。今年も、多くの人々に観測してもらおうと、4月1日(火)から「石狩湾蜃気楼情報ネットワーク」の登録を呼びかけている。
 札幌在住の気象予報士・金子和真さんが、4月から7月末まで、蜃気楼出現の期待度を、気温や水温・風向き・天候・発生事例などから予測し、自身の開設するHPに掲載している。その中で、石狩湾での蜃気楼期待度が20%を超える時は、2010年に始まったこの情報ネットワーク(登録者数53名)にも配信され、登録者はメールで受信する仕組みになっている。(写真提供:総合博物館)
 期待度20%以上の場合は、同ネットワークに配信され、登録者はメールで受信することができる仕組み。また、実際に蜃気楼が発生した場合は、同ネットワーク管理者の北海道・東北蜃気楼研究会会長で小樽総合博物館学芸員の大鐘卓弥氏や同研究会会員らによる観測報告をリアルタイムに受信することができ、これによって初観測を果たした会員の事例も報告されている。石狩湾蜃気楼情報ネットワーク登録希望者は、join-mirage_ishikariwan.F3aM@ml.freeml.comにメールを送信して登録。
 蜃気楼愛好家には、大変役立つ情報であり、この情報をもとに、現場へ駆けつけ蜃気楼に遭遇し、写真や動画に収め、今後の蜃気楼の研究に役立つ資料ともなっている。
 昨シーズンの蜃気楼は、5月10日に、銭函海岸から高島岬を見ると、トド岩が少し伸び、初観測となった。その後、17日、26日と観測。27日16:00過ぎ、札幌在住の同研究会会員の柴田進さんは、朝里から高島方面へ行き交う船が、面白い形に変化した蜃気楼を観測し、写真に収めた。
 また、北防波堤(小樽市内)にいた大鐘氏は、対岸の朝里方面の家並みが湾曲するなど近い距離での蜃気楼を観測し発表。その後、6月、7月と蜃気楼を観測したが、残念ながら特大規模の蜃気楼は観測していない。
 今年に入ってからの上位蜃気楼は、早朝のマイナス10℃前後の厳しい条件で観測した根室市川口の風蓮湖をはじめ、同研究会に昨年度から入会した斜里町在住の2名による活発な観測報告が届いている。
 春に流氷が上位蜃気楼になる「幻氷」や真冬の放射冷却現象による上位蜃気楼、夜景の蜃気楼など、蜃気楼愛好家や研究者には興味深い斜里町での蜃気楼観測の報告が相次いでいる。
 
 江戸時代以前から蜃気楼の名所と言われる富山県魚津市でも、3月29日には、海岸には多くの蜃気楼観測者で賑わいを見せているという。
 1998年から蜃気楼研究を続ける大鐘氏は、「道内各地から蜃気楼報告があり、同ネットワークに登録し、小樽でも蜃気楼に興味を持ち、観測に出掛ける人を増やすきっかけづくりになればと思う。これからも、もっと事例を増やし、グループに分け、ある共通点を見つけ、小樽での蜃気楼のメカニズムを追い求めたい。これが、自身の求める科学であり専門である」と話した。
 問合せ 0134-33-2523 小樽市総合博物館・大鐘
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