詩と音楽と講演で、小樽ゆかりの作家・伊藤整を想う、市立小樽文学館(色内1)の特別企画「雪明かりの思い出」が、長男の伊藤滋早稲田大学教授を迎えて、2月17日(土)19:00から開かれた。
18:00から開場された会場の展示室には、多くの人が集まった。係員は椅子の補充に追われるほどで、延べ約250人もの来場者があり、盛況となった。
19:00から開演され、「雪明かりの路」の詩語りや、男声合唱組曲「雪明かりの路・第二」で、場内に柔らかな詩語りと、男声コーラスが響いた。
この後、長男の伊藤滋早稲田大教授の講演「父・伊藤整と小樽」に移った。長男の滋氏は、子供から見た父親像と、整の文壇に於ける位置、文壇でのアウトサイダーが、英語・仏語を駆使して、これまでの文士像とは違った切口で、伊藤整の世界を創り出していった様子を、チャタレイ裁判や日本文壇史や交友関係などから語り明かしていった。
「整が闘ったチャタレイ裁判では、裁判を続けていたので、裁判費用で家の2、3件が建つほどだったが、我が家の家計は火の車になった。父親は軽い語り口で皆さんをからかうが、それはうちの母親に対して言ったことで、“女性に関する十二章”が売れ、ベストセラーになって、出版元は潰れたが、父親は一財産を作った」と、当事者でなければ語りえない話が続いた。
さらに、父親と母親との微妙な関係も、子供から見た眼で率直に語り、肉親でなければ判らない父と子の関係なども語り、聴衆から笑いと拍手を誘っていた。
なお、市立小樽文学館では、第7回小樽雪あかりの路に併せ、企画展「伊藤整詩集・雪明かりの路の世界」を、期間中の2月20日まで開催予定だったが、「好評につき、3月いっぱいまでの会期を延長して対応する」(玉川薫副館長)と、うれしい悲鳴を上げている。