2020(令和2)年7月から耐震補強・石材補修や屋根の全面葺き替えなど、大規模保存修理工事を行っていた旧日本郵船株式会社小樽支店(色内3)の工事完了となり、4月25日(金)から公開が再開された。
1904(明治37)年に同建造物が着工され、日本を代表する海運会社の同社の重要拠点として、1906(明治39)年10月に小樽支店が落成。佐立七次郎の設計で、防火・防寒対策に配慮した近世ヨーロッパ復興様式の石造2階建。内部のシャンデリア・壁紙・建具などは欧米製の物を使用し、地元の小樽軟石を使った重厚な外観など、当時北日本随一の豪華さを誇る建築だった。1969(昭和44)年に国の重要文化財に指定された。
欧州航路を含む貨物や旅客の取扱い業務が行われた1階営業室は、飴色に輝く木製の柱や梁、柱頭飾りが見どころ。2階の貴賓室や会議室の壁紙には金唐革紙、各室に施された漆喰彫刻の天井中心飾りなどから、明治の技術力を改めて感じる。
9:30の開館に先立ち、小樽市総合博物館・石川直章館長の司会でオープニングセレモニーが開かれ、指定管理者の株式会社日比谷花壇・宮島浩影代表取締役、迫俊哉市長、小樽商工会議所・中野豊会頭など関係者40名が出席した。
迫市長は、「2月認定の地域型日本遺産北海道の心臓と呼ばれたまち小樽でも、主要な構成文化財のひとつとして位置付けられ、まちの歴史や魅力を伝える北運河エリアの拠点としての機能も期待されている。建築から120年近く創建当時の姿に復元した前回の工事から30年以上が経過する中で、屋根の葺き替えや剥がれ落ちた金唐革紙の復元、建物全体の耐震補強を行う必要があり、2020(令和2)年から保存修理工事を実施してきた。
価値を損ねないように慎重に工事が行われ、休館が長期となったが、美しいデザインと建築美をお楽しみいただけるようになった。今後は建物を鑑賞するだけではなく、指定管理者の日比谷花壇様と協力をしながら有効に活用したい」と挨拶した。
石川館長の案内で内覧会が開かれ、防火を考慮した分厚い壁と波型鉄板を用いた天井板に特徴がある金庫室が紹介され、床には硬い札幌軟石を使用し、「樺太線小樽及び各地輸出目録」と書かれ棚に残された張り紙には、当時樺太への航路があったことが伺える。
2階の貴賓室では、金属箔を貼った和紙を版木に打ち込み、立体的な文様を浮き立せた金唐革紙が修復され、触れて鑑賞できるコーナーも設けた。
樺太境界画定委員会が行われた160㎡を超える会議室では、おたる案内人ジュニアに取り組む小樽市立手宮中央小学校5年生32名が、同プログラムの一環で見学に訪れ、石川館長の説明にメモを取りながら、興味深い様子で会議室の椅子に座り会議の雰囲気を体験。「こんなに大人数で座れる椅子とテーブルがあり感動した」と喜んでいた。午後からは同校6年生が見学に訪れた。
再開を心待ちにしていた佐藤さんは、「修復工事がいつ終わるのかと思っていたので、市民としても喜ばしいこと。無事に修復が終わり、久しぶりに中を観て立派になった。2階の会議室が重厚な造りで、令和の時代に見ても豪華絢爛。ずっと残していくべきだと思う。観光客もそうだが、小樽市民にも地元にこんなに立派な建物があることを再認識してもらいたい」と話していた。
開館時間:9:30~17:00 火曜日(祝日の場合は翌平日に振替)休館 要入館料
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