村上芳正の会 小樽文学館へ原画等一式寄贈

 村上芳正(よしまさ)の会(本多正一代表)は、装幀画家の村上芳正氏(1922‐2022)の原画等の資料一式約448件(724点)の寄贈を、2024(令和6)年12月に市立小樽文学館(亀井志乃館長)へ寄贈した。

 

 同氏は、1922(大正11)年5月長崎県長崎市生まれ。1953(昭和33)年に二科展で初入選し、1958(昭和33)年から5年連続で入選を果たす。1961(昭和36)年に芝居仲間から三島由紀夫氏を紹介され、ポスターやチラシを手掛け、その後、三島氏・吉行淳之介氏・瀬戸内晴美氏、北海道ゆかりの渡辺淳一氏などの装幀画を担当。日本の装幀家・挿画家・イラストレーターとして活躍した。

 

 小樽出身ではないが、その関係者と同館に縁があり、2011(平成23)年に「文学に捧げる花束・村上芳正展」を開催。2020(令和2)年にも予定していた企画展が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止となっていた。

 

 その後、2022(令和4)年11月8日に同氏が亡くなり、2023(令和5)年11月に追悼展「村上芳正 異端と正統の装幀画展」を開催している。

 

 2022(令和4)年に同氏が亡くなったことを受け、支援者が集まり「村上芳正の会」を設立。資料を一括して保存し、同氏の画業を広く伝え、活用できる寄贈先を検討しいてたところ、同館なら同氏や関係者の意思を引き継いでくれると寄贈先に決定した。

 

 著名な文学作品の装幀画を手掛けた同氏の作品は、本人や関係者が大切に保管していて市場に出ることはなく、多くの資料が残っている。

 

 寄贈された資料の中には、ペンで描いてから色彩した細密画の家畜人ヤプー(沼正三著)の表紙の原画もあり、色あせることなく残されている。

 

 三島由紀夫著「天人五衰(てんにんのごすい)」の表紙にも使われ、習作も残されていて、作品を描き上げる上で練習を重ね、試行錯誤する工程をうかがい知ることができる。2013(平成25)年には画集を出版している。

 

 小樽市表彰規則第2条第2項第2号の規定(公益のため市に100万円以上の寄附をした者)に該当することから、篤志者として表彰され、本多代表からは、「会のメンバーとしてこれまで支えてきた皆さんの労をねぎらう形にしたい」と話していたという。

 

 伊藤あや学芸員は、「作品は突き放すような美しさが独特の魅力だと感じている。村上芳正さんの会の皆さんのこれまでの業績を広く伝えて残していきたい思いとともに、資料を小樽文学館で受け取った。そのための活動を今後しっかりとしていきたい」と話していた。

 

 ◎薔薇の鉄索〜村上芳正の世界(外部)