小樽市総合博物館(石川直章館長)本館(手宮1)イベントプラザに、収蔵車両の電気自動車ED76形509号の展示施設が完成し、11月9日(土)から公開が始まった。
2023(令和5)年4月に、中央ホームで内部公開していた同車両の変圧器やコンデンサーなどにPCBが含まれていることが発覚し、7月から部品撤去のために解体し辛うじて前頭部のみが保存できた。
これを生かして「実物×原寸×全体」をコンセプトに、総工費2千万円をかけて展示施設の整備を進め、11月8日(金)に展示施設が完成。9日(土)に前頭部の運転席内部は見学可能とし、車両の欠損部分を原寸大グラフィックで再現し一般公開された。
反対部分には使われていた現物の車輪とパンタグラフを展示。電気機関車を紹介する解説パネルを展示し資料展示コーナーを設けた。
ED76形の500番台は、1969(昭和44)年まで北海道のために作られた22両のうちの1両で、電化用に量産された道内最初の電気自動車で、蒸気の時代から新しい時代へ繋ぐ架け橋となった車両の特徴などを紹介。なぜ解体しなければならなかったかの経緯と、北海道の鉄道交流電化の始まりに活躍したあゆみも紹介している。
整備経費を集めるためクラウドファンディングを実施し、目標額は達成できなかったが300万円が集まり、現在も継続中の小樽ファンが支えるふるさとまちづくりでは1,200万円が集まった。
大鐘学芸員は、「車両全体をイメージした空間の中に展示コーナーを作るアイディアを活用。博物館としては、残すことができた前頭部を展示し、前頭部しか残せなったPCB除去の過程や歴史的背景を語り継いでいきたい」と説明した。
現存する車両は、同509号と三笠鉄道記念館(三笠市幌内町)にある1両のみとなる貴重なもの。
同館の展示車両でPCBが見つかり解体したED75形501号はさらに貴重な車両で、前頭部と後頭部及び内部機器と台車を取り除いた中間部を残した。2026(令和7)年以降の展示公開に向け整備をするために、検討作業を進めている。
◎電気機関車(ED75とED76)のPCB処理について(外部)
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