絵画で見る”炭鉄港“三人展 映像”小樽聖”上映

 市立小樽美術館(色内1・苫名真館長)2階企画展示室で、特別展Ⅲ「絵画で見る炭鉄港三人展—伊藤光悦・輪島進一・羽山雅愉」が、10月19日(土)から始まった。

 

 文化庁が選定する「日本遺産」に2019(令和元)年に認定された「本邦国策を北海道に観世〜北の産業革命 炭鉄港」は、空知の「鉄鋼」・室蘭の「鉄鋼」・小樽の「港湾」を繋ぐ鉄道を舞台に繰り広げた産業革命の物語。

 

 本展は、夕張・室蘭・小樽の三都市の魅力を感じ取り、崩壊と新たな構築のさまを題材にしてきた3人の具象系画家を取り上げ、その絵画の魅力を紹介している。

 

 会場には、夕張に生れ栗沢町に育った画家・伊藤氏が、産業構造の変化により街が凄まじい勢いで衰退していった跡を辿り、無人になった炭坑の病院跡や廃校、住居などの寂しくわびしい様子を勢力的に描いた14点を展示している。

 

 1987(昭和62)年から3年間室蘭に暮らした輪島氏は、日本製鉄の工場景観と企業城下町に圧倒され、大きな影響を受けた。今回は、機械と人間を融合させた近未来的な世界を表現した作品など13点が並ぶ。

 

 釧路市に生れ小樽在住の羽山氏は、1990年中頃から「黄昏」シリーズと題して、光輝く小樽港の展望風景を描き、空には月を描き幻想性を盛り込み、澄んだ色彩と洗練された構図の10点を展示している。

 

 コロナ禍は静物を描くことも多くなったが、今回は、最新作「冬の雨・春の夢」と題して、小樽運河を題材にした作品130×194(2点組)を復活させた。

 

 PHOTPOET(演出・プロデュース:内野一郎氏・撮影:高木陽春氏) が制作した「小樽聖」を初投影。

 

 2023(令和5)年の夏に小樽で撮影した、日常目線での89点を14分11秒の映像にまとめ、日本語・英語・繁体字で詩も盛り込み、ヨハン・セバスティアン・バッハ「無伴奏チェロ組曲」のBGMとともに投影し、小樽を写真と言葉で感じ取るコーナーも設けた。

 

 小樽出身で東京在住の内野氏は、「多面的な小樽。観光地だけではなく小樽には魅力がある。後志エリアの気候風土の意味合いを探っていってほしい。これからの小樽の再生に繋げがれば」と話した。

 

 星田七重学芸員は、「伊藤氏は、廃墟化し目を背けてきた夕張を描かなくて良いのか、必然性というか絵に強靭性を感じる。輪島氏の室蘭は、機械と人間が合体した社会批判。羽山氏の小樽はおしゃれに光り輝く小樽港と新作も発表。

 

 炭鉄港は、廃墟化している絵で重く絶望感があるが、唯一、小樽はまちが再生していく勢いが感じられる。この展覧会を同館で見て、炭鉄港を胸に刻むためには、小樽聖の写真を公開するに相応しいと感じた」と話した。

 

 10月20日(日)10:00から、アーティストトークの開催に合わせ、第1弾の伊藤氏をはじめ、三人展の作家・輪島氏と羽山氏、映像を提供した内野氏も勢揃いし、大勢の聴衆も集まった。

 

 伊藤氏は、1960年代の夕張を描いたスケッチブックを紹介後、自分の展示作品について語った。

 

 夕張市に生れ炭鉱で育って教員となった伊藤氏は、仕事に追われ描けなかった時もあったが、30歳近くに狭い市営住宅の一室をアトリエにして書き始めた。閉山が決定し瓦礫のふるさとを目にしてから、炭坑をテーマに一番初めの作品「閉山1」や、立入禁止や国境などの境目をテーマに描いた、無人のまち「石棺の街」など石棺3シリーズを紹介。

 

 「いろいろな体験といろいろな物の見方をすれば描くものに不自由はしない。この度の小樽の展示会でさらに意欲が沸いてきた。展覧会を契機に人がいた痕跡を描きたい」と締めくくった。

 

 アーティストトーク第2弾は10月26日(土)輪島進一氏、第3弾は11月2日(土)羽山雅愉氏。

 

 ◎特別展Ⅲ「絵画で見る炭鉄港三人展 伊藤光悦・輪島進一・羽山雅愉」(外部)