市立小樽美術館(色内1)3階一原有徳記念ホールで、特別展「美術評論と版画家の交流 酒井忠康への手紙」が9月28日(土)から始まった。
美術評論家の酒井氏は、余市出身で慶応義塾大学を卒業し、日本の美術館のリーダーシップを取っていた鎌倉の神奈川県立近代美術館の学芸員となり、そこで館長だった高名な美術評論家・土方定一氏に指導を受けた。
土方氏も一原のモノタイプの作品に魅せられ、1960(昭和35)年東京画廊の個展を斡旋して世に送り出した人物である。
同展は、今年3月に世田谷美術館館長を退官した酒井氏から、同美術館に一原氏の関連資料が寄贈され、長年保管していた一原氏からの手紙が70通もあったことがきっかけとなった。
一原氏が酒井氏に宛てたの手紙の背景や2人の交流を、手紙や作品を通じて紹介している。
今回紹介されているもうひとりの人物は、小樽地方貯金局で一原氏の同僚で美術部員でもあった親友の山本茂氏。瑞々しいパステル画を描き、未経験の管理職の立場から組合運動の板挟みとなり、健康を害し若くして世を去った。
助けられなかったことに生涯憤りを感じていた一原氏は、著書「クレパス画—歪曲された戦後の労働組合運動」で、悲しい出来事に触れている。山本氏の甥だと分かった酒井氏に運命の糸を感じていた。
最初のコーナーで、同僚で親友の山本氏についてや同館収蔵の山本氏のパステル画を展示。次のコーナーで、酒井氏に宛てた手紙の中に書かれた土方貞一氏の話題を紹介。
一原氏の手刷り作品からプレス機作品への変遷を、手紙と共に紹介している。
担当の星田七重学芸員は、「人生のドラマがあり、小樽美術館でなければできない特別展。同館だから開催する意味がある。貯金局だったここで働いていた一原氏と山本氏の人間関係や、山本氏が酒井氏の叔父だった不思議な縁など、それらをくみ取って楽しんでもらいたい。一原氏の推薦で山本氏の絵も同館に収蔵し展示している」と来場を呼びかけている。
関連事業として、酒井氏の従兄妹で現代美術家の池田緑さんによる講演会を、11月16日(土)14:00〜15:00同館研修室で開催。要観覧料、定員80名。事前予約(0134−34−0035)
特別展「評論家と版画家の交流 酒井忠康への手紙」
9月28日(土)〜2025(令和7)年2月2日(日)
市立小樽美術館(色内1)3階一原有徳記念ホール 要観覧料