小樽在住の能面作家・外沢照章氏の個展「能面を打つ」が、6月29日(土)からUNGA PLUS GALLERY(色内2・旧小樽倉庫)で始まった。
これまで16回も、旧岡崎家能舞台がある小樽市公会堂(花園5)で続けてきたが、改修中となったことから、北前船と深いつながりのある旧小樽倉庫に会場を移し、特別展として能文化を体験できる工夫を凝らした展示もあり、見どころ満載となっている。
同ギャラリーを運営する小樽百貨UNGA↑(プラス)プロデューサーの白鳥陽子氏も、外沢氏の能面の熱烈なファンで、この場所での展示会を実現させた。
会場中央には、白鳥氏のアイディアだという、カメラマン・志佐公道さんが撮影した小樽能楽堂の能舞台鏡板を、布にプリントして飾り能舞台を再現。
外沢氏は42歳から面を打ち始め、2003(平成15)年に小樽に移住も、能面250種類のうち基本形92種類の7つのカデゴリーを、まんべんなく打つことを目標に制作を続けている。
2023(令和5)年に72種類目の「釣眼(つりまなこ)」を完成させ、2024(令和6)年現在、72種類・112面を完成させている。本展ではその中から選りすぐりの44点を展示している。
個展初の試みとして、能の中でも人気演目のひとつ・道成寺で使用される、後シテの「うきき般若」と前シテの庄屋の娘「近江女」の面を、能舞台鏡板のプリント前に空中から吊るし、面を付けたイメージも楽しむこともでき、面から覗いて見るとかなり視野が狭いことが分かり、演者の努力と苦労が伝わる。
「孫次郎」はうつろな表情が特徴で、目の位置が真ん中よりも高いと大人顔となり、「小面」は可愛らしい表情で、おでこ部分を広くとることで幼い顔になるという。
外沢氏も会期中は常駐し、来場者からの質問に丁寧に応じ、「喜びや悲しみが出せるのは能面だけだ」と語り、「女面はうわ瞼と下瞼の位置に微妙な差があり、下を向くと悲しい表情になる。能は女性が花形となり、喜びもの分だけ悲しみもある」と面を持って説明。
「今までやってきた個展と違い、核(能舞台)となる部分が構築され、その周りに展示でき、作家としても最高に幸せな状況。能舞台がなくても充分な雰囲気がある」と話した。
白鳥氏は、「古典に詳しいスタッフもいて、北前船の繋がりもあり、能面展をここで開催する意義がある。公会堂での開催ができなくなるなどいろいろなことが重なり、この建物が呼んでくれたのだと思う」と来場を呼びかけている。
能面を打つ 外沢照章個展 6月29日(土)〜7月7日(日)11:00〜18:00
UNGA PLUS GALLERY(色内2旧小樽倉庫・小樽百貨UNGA↑2階)
入場無料