市立小樽美術館(色内1)収蔵品を紹介する「戦後の小樽画壇 国松登と富樫正雄」が、12月6日(水)〜28日(木)に1階多目的・市民ギャラリーで開催する。
両氏は、小樽に多大なる影響を与えた洋画家で、心象と写実と異なる作風でありながら、戦後の復興になくてはならない存在。妻同志が姉妹で義兄弟でもあった。
函館出身の国松氏(1907〜1994)は、透明な色彩と新鮮な造形感覚を持ち、北海道をテーマに、物語性に溢れた心象的な風景を描き、絵画と詩を融合させる手法。道画壇の中心であり続け、戦後の芸術活動のために小樽市展を立ち上げ創立委員長を務めた。当時の市展はプロの画家が多数を占めていた。
1960(昭和35)年小樽を離れて札幌に移り、1962(昭和37)年「氷人」シリーズが誕生。流氷がぶつかり合う音に眠れず外に出ると、流氷の上に男女に見える灯台をシルエットで表現し、次々と作品を世に送り出した。マリンホールの緞帳にも使われている。
会場には、小樽公園や市民会館と市役所の間にある池に白馬を描いた作品「白馬」、戦後間もない頃、丸井に来ていた移動水族館で見た目のないクロダイに遭遇し、自分の感情を表した「目のない魚」を発表。小樽時代の最後の作品となる。
その後、根室を旅した「氷上のけものたち」など、流氷の風景とペガサス、ハクチョウ・男女が描かれている。流氷と男女のシルエットが融け込む月夜の風景の「氷人」など14点を展示。
一方、小樽の水産関係の商家に生まれた富樫氏(1913〜1990)は、英語教師だった伊藤整に出会い、早くから絵の才能を発揮していた。
東京芸術大学に入学するも2年で退学。再び小樽に戻った。小林多喜二や芸大の先輩の大月源二を尊敬し、迫真的なリアリズム、基礎的なデッサン力もあり、写実的で現実主義を生涯貫いた画家。
労働者や家族の姿を観察し、鋭く的確に描写して評価された。1959(昭和34)年に手稲に移住し、モチーフが人物から風景に変わった。
会場には、労働者や待合室での人物画をはじめ、伊藤整を偲んで描いた塩谷海岸や春近い手稲山麓、北大構内などの風景画17点が並んでいる。
絶筆の「冬鳥」は、満ち足りた風景に2羽の鳥が描かれ、旅立つ同氏の心情を読み取ることができる。
星田七重学芸員は、「同館での収蔵品を展示し、市民に還元する意味も込め、今回市民ギャラリーでの開催となった。戦後間もない小樽画壇を盛り上げた2人の一流画家は実は義兄弟だった。2人の考え方や志の違いに、リスペクトし合う関係や意外性も合わせて、作品の素晴らしさを鑑賞してもらいたい」と話した。
Collectionストーリー4「戦後の小樽画壇 国松登と富樫正雄」
12月6日(水)〜28日(木)9:30〜17:00(最終日15:00)
市立小樽美術館(色内1)1階多目的・市民ギャラリー 入場無料
◎Collectionストーリー4「戦後の小樽画壇 国松登と富樫正雄」(外部)