市立小樽美術館(色内1)では、小樽運河100年を記念して、1階市民ギャラリー企画展・Collectionストーリー③羽山雅愉の見つめた運河が、6月28日(水)〜7月2日(日)で開かれている。
同館へ寄贈のあった1点を含む新たな収蔵品5点の全6点を展示。どの作品も、ベールに包まれた色彩と実像と虚像が融合した独特の世界が広がり、ファンも多い。
1998(平成10)年制作の120号に描いた「黄昏」は、富岡教会から海を見下ろした景色で、タイトルにもある黄昏時は、同氏が一番好きな時間帯で、昼でもなく夜でもなく落ち着き、制作意欲が湧くという。どの作品も「黄昏」をイメージし、30年以上書き続けているという。
他5点は新収蔵品で、2014(平成26)年制作の「青い月」(札幌)は、札幌へ何度か通ってホテルモントレを入れた構図が気に入り、昼間の風景に青い月を入れることでがらりと変わり夜を思わせる。あまり暗くならないように配慮して、ひと月半かけて描いた大作。
2015(平成27)年制作の北海製罐旧第3倉庫を中心にした「青い月」は、グレーの倉庫に赤い扉と運河の水面を深みのある緑色にするなど苦労したという。手前には残雪もあり、寒々とした季節を伺い知ることができる。遠くに夕焼けの赤を入れて青い月を描き、現実にはない風景を創り上げ、同氏の世界を印象付けている。
2016(平成28)年「黄昏」は、雨の日の運河周辺の建物を、青のグラデーションにすっぽりと包まれた「青い運河」など、どの作品もベールに包まれたような幻想的な光景が広がり静寂を感じさせる。
同氏は建物を中心に描いていたが、運河の埋め立てがあってからは、風景が無くなると思い、写真に収めスケッチに描くと絵になると、風景画も手掛けるようになった。現実に近いが、全体的に霧に包まれているような広大で最果てをイメージし、明るい色で仕上げているそうだ。
「現実を写した写真と私が描く風景を見比べてもらいたい。違いは自身が考えた構図で、ある方面から見てイメージした風景も感じてもらえればと思う。ぜひこの機会に御覧いただきたい」と話している。
コロナ禍で風景が描けなくなり、静物画を描くことが多かったが、再び風景画も始め、新作での個展に期待が高まる。
市民ギャラリー企画展 小樽運河100年記念企画
Collectionストーリー③羽山雅愉の見つめた運河
6月28日(水)〜7月2日(日) 市立小樽美術館(色内1)1階市民ギャラリー1 入場無料