運河館トピック展 小樽の四ヶ散米行列を紹介

 小樽市総合博物館運河館(色内2)第一展示室で、松前神楽から派生した民俗芸能「四ヶ散米(しかさご)行列」について紹介するトピック展が、4月29日(水)から開催されている。

 

 担当したのは、同館の歴史・民俗を担当する蟬塚咲衣学芸員で、道内8ヵ所で伝承され、福島や礼文では町の文化財として注目されているが、小樽ではあまり知られていない四ヶ散米行列について、大学院でも研究していたことから、今回の展示で紹介するに至った。

 

 四ヶ散米行列は、松前神楽の演目のひとつから派生した民俗芸能で、江戸時代から現在の福島町や知内町の神社で行われ、神輿が進む道を払い清める役わりを担っていた。

 

 松前神楽は、神々を招き、その前で鎮魂・清め・祓いなどを行う神事芸能で、1600年代に松前藩の城内行事として始まり、北海道の日本海側の地域で伝承。2018(平成30)年に、国指定の重要無形民俗文化財に指定されている。


 
 四ヶ散米行列は、福島町と知内町のほかに、黒松内・奥尻・小樽・小平・利尻・礼文でも伝承されている。

 

 小樽では、小樽市若竹町の潮見ヶ岡神社の神職が、奥尻町にある澳津神社の例大祭の手伝いで見かけ、神社のまつりを盛り上げたい想いから、1990(平成2)年頃から小樽に伝わり比較的新しい。

 

 調べていくと、おたる潮まつりの神輿パレードの先頭で舞っていた動画が残され、神輿が進む道を払い清める役わりを担っていた。

 

 開始当初は、先頭から薙刀・弓矢・剣・刀の順番で行われていたが、より安全に舞えるようにと、舞い手などが手に携える採物(とりもの)は、現在、刀の形をしている剣(けん)のみとなった。

 

 潮見ヶ岡神社所蔵の手作りの長鳥帽子(ながえぼし)や装束(白衣・袴・鬼狩衣・鈴・襷・靴)も展示されている。

 

 写真からは、松前神楽の伝承がない奥尻では青年男子が、松前神楽の伝承が盛んな小樽では男女問わず小学4~6年生が中心となり舞っていた。

 

 会場では、潮見ヶ岡神社所蔵の四ヶ散米行列をしている1990(平成2)年~1992(平成4)年のおたる潮まつり、1995(平成7)年潮見ヶ岡神社例大祭、2002(平成14)年頃のおたる潮まつり、派生元の松前神楽「四ヶ散米舞」の貴重な映像を放映している。

 

 伝承地によって名称も様々で、小樽では四ヶ散米行列(しかさごぎょうれつ)とし、
鬼肩衣(おにかたぎぬ)とも呼ばれるが、小樽では鬼狩衣(おにかりぎぬ)と呼び、舞う時に鳴るように鈴をつけている。3人で1組となり、最低でも15人で舞う。

 

 コロナ禍で3年連続中止となり、これまで覚えていた子どもたちは中学生となり、今年6月の潮見ヶ岡神社例大祭では実施できない模様。神社でも復活させたい想いはあり、コロナにより途絶えてしまったが、今後コロナが明けても続けられるかどうか注目が集まる。

 

 蟬塚学芸員は、「小樽に住んでいる方でも、江戸時代に北海道の道南で始められた四ヶ散米行列が、小樽にも伝わっているという歴史的な背景を知らない人が多い。さらにコロナ禍で4年連続の中止となっており、伝承断絶の危機に直面している。今後も継続していけるかどうか、注目してもらいたい」と話した。

 


 運河館トピック展「小樽の四ヶ散米行列―まちゆく歩みに想いをのせて」

 4月29日(土)~8月31日(木)9:30~17:00

 小樽市総合博物館運河館(色内2)第一展示室

 入館料:一般300円、高校生・市内70歳以上150円、中学生以下無料

 

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