総合博物館収蔵・林家旧蔵アイヌ風俗画画稿 小樽市指定文化財へ

 小樽市教育委員会では、小樽市総合博物館収蔵の林家旧蔵アイヌ風俗画画稿一式・60点を、同委員会の議決を得て、1月26日(木)付けで小樽市指定文化財に指定した。

 

 小樽市指定文化財は、有形文化財5件・無形文化財1件・無形民俗文化財2件・史跡1件の計9件があり、新たに有形文化財1件が加わった。

 

 この画稿は、江戸末期から明治初期(19世紀)に、後志地方で暮らすアイヌの人々の日常の様子や寿都周辺の地図などを描いた下絵、儀式や道具の解説文を含む。作者は不詳。

 

 アイヌ絵に関して、これだけまとまったものが北海道で発見されたことは、他には例がなく大変貴重なもの。

 

 余市で漁場を経営した林家ゆかりの人物から、2004(平成16)年に寄贈を受けて、トランクの中に納められ保存状態も良好だった。翌年2005(平成17)年に企画展を開催している。

 

 墨で和紙に書かれていて、アイヌの人々の表情や暮らしが分かるスケッチから様々なことが読み解け、歴史学的・民俗学的・美術史的にも貴重な資料と言える。

 

 江戸時代の小樽は、鰊を中心とした漁場経営の場だったことから、帰業の図や記事掲載の同委員会提供「鰊場雑景」の他、狩猟図・祝宴の図では足輪の詞書(使い方)もあり、談笑図には桶を脇に抱えて赤ん坊をあやす老人や笑う婦人の姿が描かれ、アイヌの暮らしぶりが分かる。

 

 石川直章館長は、「特徴として、冠の素材やアイヌの祭具のひとつ・イナウの使い方などの注意書きがあり、詳しくメモしていて、画稿の形で世に出るのは珍しい。下絵の段階のため真実に近い」と強調した。

 


小樽市教育委員会提供[鰊場雑景]

 描画の手法から、幕末期の円山派の系統を引く者で、襖や屏風絵を描くことを生業として、北後志の海岸で各地の漁業経営者たちを訪れていた旅の絵師が残したものと考えられているが、詳しいことは分かっていない。

 

 2月9日(木)13:30から小樽市生涯学習プラザで、「笑顔のアイヌ風俗画 林家旧蔵アイヌ風俗画画稿の魅力」と題し、石川直章館長が講師を務め、はつらつ講座の新ふるさと紀行を開催する。問合せ 0134−24−3363 教育委員会教育部。

 

 ◎小樽市の文化財(外部)