小樽市制100周年記念事業「ITAYA SPIRIT—時を刻むうつわ」と題し、7月14日(木)〜18日(月・祝)に、うんがぷらす株式会社(色内2)2階ギャラリーで、5名のクリエイターの作品展と中川町板谷の森から見える小樽の物語パネル展が開催されている。
市制施行された大正時代の頃の小樽は、北の玄関口として物流の拠点となり、日本随一の商都として成長。その当時、北海道の海運王と呼ばれた板谷宮吉(1857〜1924)が、親子二代に渡り小樽経済の発展に寄与した。
町の87%が森林の中川町には「板谷地区」と呼ばれる土地が現存し、明治末期に板谷氏が国有林開地1,300haあまりの土地を入手しているところから、今もその名が残る小樽商人の物語と、同町から切り出された木材を使って同町在住1名と札幌在住の4名のクリエイターが、技術を駆使してうつわをテーマに表現した作品展を展開。
家具を設計製造する前田裕人さんは、サクラ・タケカンバ・ナラを使い、木目模様とやわらなか曲線の2種類の皿を製作。普段は、乾燥した木材を使うが、乾燥前の木そのものを味わいながら、作り手だけの木の香りを楽しんだと言い、木の良さを伝えたいと皿にしたためた。
木工作家の清水宏晃さんは、ミズナラの丸太を木工旋盤でくり抜いた、見た目よりも軽い大型の器やフリーカップなど、実用的な木工製品を展示し、「人肌に近いぬくもりがあり、命ある素材で使った器。使う人がそれぞれに感じてもらえらば」と、木の魅力について話した。
中川町住民の髙橋綾子さんは、木でものづくりをしたいと2014(平成26)年に移住。産地の未利用木材を使って作品を作ろうと思い、1本の木の利用率を上げる町の取り組みにも賛同し、木材流通コーディネーターの福田隼人さんから木材を調達している。
今回の展示会の話を聞き、天塩港ルートで小樽へ木材を運んだかつての光景に思いを馳せ、シナノキを使って初めての船形の飾り鉢を作り、身近な草花を挿して楽しむ一輪挿しの花器、天然石と木のコラボのブレスレットを展示。中川町の辻井養蜂所のはちみつも販売している。
木工挽物職人のクドウテツトさんは、市制100周年記念として普段作らない物に挑戦。小樽の長者番付にも載った板谷氏をイメージして、燭台・蓋物・ランプシェード・キャンドルの台座など、濃い色のオニグルミを使って製作。
クドウさんは、「小樽と中川町とは繋がりがあり、作品を見てもらいたい。会場の壁には、中川町の森の風景写真なども展示し、過去の人が繋いだ歴史を感じてもらいたい」と話した。
家具を製作販売する梅原紳一郎さんは、コンセプトを“うつわ”として、中川町との繋がりを歴史的に捉え、ナラとメジロカバを使ったチェストなど入れる物を出展した。「一級品ではなく、その土地から採れた自然の荒々しさが残っている木材を使用した。使う人にも楽しんでもらいたい」と話した。