小樽の能楽―旧岡崎家能舞台と能面・装束の世界開催

 小樽にある北海道唯一の能舞台・旧岡崎家能舞台を知るひとつとして、市立小樽美術館(色内1)2階企画展示室で、5月14日(土)から「小樽の能楽―旧岡崎家能舞台と能面・装束の世界」が始まる。

 

 小樽の商人・岡崎謙が、1926(大正15)年に入船の自宅中庭に能楽堂を建立し、没後、舞台部分を切り離して小樽市に譲り、1961(昭和36)年に旧小樽区公会堂とともに小樽公園内に移築された。

 

 本展では、小樽能楽堂の能舞台鏡板を等身大に印刷した老松を展示し、能楽文化を根付かせる原動力となった、岡崎家ゆかりの品々の多彩な装束・謡本・扇類、能舞台の建築模型・設計図など60点と、能面作家の外沢照章氏制作の能面80点(2回に分けて展示)を、一同に展示している。

 

 能楽をもっと身近に親しんでもらおうと、三ツ江匡弘氏が旧岡崎家能舞台を生かす会を立ち上げ会長として活動。能楽に興味を持つ初心者や子どもたちに「おたる市民能」などの体験会を実施。2011(平成23)年には、北海道地域文化選奨を受賞し、能舞台を活用して様々な取り組みを行ってきた。

 

 また、小樽市民会館で見つかった北海道最古を思われる、1935(昭和10)年製作の旧小樽昭声会(旧渡辺昭声会)の組み立て式能舞台を、三ツ江氏が外部講師を務める北海道職業能力開発大学校(銭函3)の学生と的野博訓指導員、梶原建装・木工房「匠伽藍」主宰の梶原邦雄棟梁の協力で再現した能楽堂の模型と、部材の一部の「老松」が手稲神社に奉納されていることが分かり、同会が譲り受けたものも展示している。

 

 三ツ江氏とも深い交流があった外沢氏は、42歳から面を打ち、2003(平成15)年に小樽に移住。これまで38年間で、能面250種類のうち基本形92種類の7つのカデゴリーをまんべんなく打つことを目標に制作を続け、現在71種類109点を達成した。

 

 その中から、初心者にとっても楽しめるよう選りすぐりの能面80点を、展示替えで40面ずつ展示。

 

 会場には、入口側から翁系・男系・鬼神系、壁を越えた展示スペースには女系・怨霊系・神霊系。完成に1年間を費やしたという、34年ほど前に制作した「大癋見」や同年に制作した「小癋見」、新作の「景清」や作り直した「天神」も展示されている。

 

 女面では、一番若い15、6歳の清楚な美しさを表現した小面から99歳の小野小町までが一同に鑑賞でき、年の順に顔の形や毛の形などの特徴を確認できる。

 

 嫉妬に狂う女性を表現した般若の角は怒りの度合いを表現し、面のひとつひとつに、どんな物語で使われていたのか書かれている。

 

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2019(令和元)年の第15回能面展を最後に開催が中止となり、能楽堂の常設展は続けているが、能面展としては3年ぶりとなる会期中は、同氏が水曜日午前中と日曜日午後に在廊し、質問等に対応しており、「能楽とはどういうもので構成されているか、この展示会場で知ることができ、なかなかできない企画展だ」と来場を呼かけている。

 

 小樽の能楽―旧岡崎家能舞台と能面・装束の世界
 5月14日(土)~7月10日(日)9:30~17:00 毎週月曜日休館
 市立小樽美術館(色内2)2階企画展示室
 要観覧料

 関連事業1
 6月4日(土)14:00~15:00
 建築史家の駒木定正講演会「旧岡崎家能舞台の構造と意匠」
 事前予約:0134-340035)が必要。

 関連事業2
 6月11日(土)・12日(日)10:00~15:00
 外沢氏の展示替え解説会。能面の裏側を見せながら解説。

 関連事業3
 6月12日(日)10:00~15:00
 着物での来館者・先着40名に、ささやかなプレゼント進呈

 

 ◎特別展「小樽の能楽―旧岡崎家能舞台と能面・装束の世界」(外部)

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