春から夏にかけては、“高島おばけ”と呼ばれる石狩湾で見られる上位蜃気楼の季節だが、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響で外出自粛となり、蜃気楼愛好家が思うように観測ができない状況が続いていた。
昨年よりもひと月遅れで、6月10日(木)昼頃、高島から見た石狩市方向に、小規模ではあるが上位蜃気楼の初観測の発表に続き、小樽でも初の真夏日となった11日(金)には、待ちに待った大規模な上位蜃気楼が、小樽市総合博物館の大鐘卓哉学芸員により観測された。(写真提供:総合博物館)
同学芸員は長年に渡り蜃気楼の研究を続け、同氏が管理人を務める石狩湾蜃気楼情報ネットワークに登録しているユーザーに、その成果を配信。
蜃気楼の発生期待度や予兆、発生した際にはリアルタイムに報告するなど、蜃気楼愛好家らに情報提供している。
同学芸員によると、石狩湾新港のタンクや発電施設などの下部に伸びが確認でき、その後、石狩湾新港方向の上位蜃気楼が少しずつ治まり、だんだんと北上し、北石狩衛生センターや厚田方向の海岸に伸びが見られた。全体として、対象物の時間的変化が少なく、変化の乏しい現象だったと報告している。
気温の高い日が少ないこともあるが、新型コロナ感染症感染拡大を受け、多くの蜃気楼ウォッチャーの活動が自粛されていることが大きいと、今シーズンの上位蜃気楼の初観測が遅くなった要因だととした。
翌日11日の大規模蜃気楼については、「13:00半頃、高島に到着すると、すでに石狩湾新港方向がわずかに上位蜃気楼になっていた。少しモヤがかかっていて、見通しはあまり良くない状況。13:00の手稲山口アメダスの気温が31℃近くまで高くなっていたので、その後に蜃気楼規模が大きくなると期待してしばらく待機。
14:00頃、上位蜃気楼になって見える範囲が、段々と南側の銭函辺りまで移動して、蜃気楼が大規模化する兆候が見え、蜃気楼化の範囲は、さらに、張碓・朝里、そして東小樽海岸の辺りまでに広がり、肉眼でも、蜃気楼によって景色が通常とは異なることが分かる大規模な蜃気楼だった。
今回、石狩湾新港のタンク群方向については、蜃気楼で盛り上がった海面がタンク群をかくしてしまい、変化に乏しい状況。
変化が大きかったのは銭函の海岸で、低層の建造物が伸び上がって見えたので、まるで高層ビルが林立しているような風景が広がり、張碓の海岸も大きく伸び上がって見えた。今回、特筆すべきは、朝里が蜃気楼によって駅近くの建物が伸びて見えたこと。高島から朝里までは6kmほどの距離なので、モヤの影響も少なくクッキリと見ることができた」と、その様子を詳しく報告した。(石狩湾蜃気楼情報より)
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