まちづくり講演会 小樽塩谷に残る北前船遺産

 船絵馬の発見をきっかけに、塩谷桃内まちづくり推進委員会(前田正夫会長)では、第1回目の講演会「塩谷にのこる北前船遺産-歴史文化を活かした塩谷桃内地区のまちづくりを目指して-」が、10月10日(土)14:00〜15:30、小樽経済センター(稲穂2)7階会議室で開催され市民ら70名が参加。

 

 同委員会は、塩谷桃内地域の自然環境や風土に根付く歴史文化遺産など、地域資源を生かした地域づくりを目指し、貴重な遺産を後世に繋ごうと、2020(令和2)年9月に設立。

 

 地域資源の保存と活用・情報発信・共有によるまちづくりを目的に講演会を開き、第1回目は、塩谷地区の北前船遺産とそれらを活かしたまちづくりの可能性をテーマに、小樽商科大学グローカル戦略推進センターの高野宏康氏が講師を務めた。

 

 高野氏は、石川県加賀市出身で、曽祖父は北前船の船乗り。北前船の歴史的価値と観光資源化の研究を専門に、歴史文化に関する調査研究を行い、歴史文化を活かした地域活性化の取り組みを行う。

 

 2013(平成25)年から、小樽での北前船遺産の調査が開始され、2015(平成27)年には、龍徳寺金比羅殿(真栄1)の8面と恵比寿神社(祝津3)の2面の船絵馬が見つかった。2018(平成30)年5月には、小樽市の日本遺産「北前船」の構成文化財の認定を受けた。

 

 船絵馬は、北前船の船乗りたちが航海安全を祈願して奉納したもので、船や帆・人が緻密に描かれ、船名や奉納者名が記載された歴史的資料としても重要とされる。

 

 2019(令和元)年11月、徳源寺(塩谷2)に隣接する龍神堂内から船絵馬2面を含む北前船遺産が、2020(令和2)年6月には、塩谷神社(塩谷2)絵馬堂から30面もの船絵馬などが確認された。これらのほとんどが明治以降に奉納されたもの。

 

 徳源寺は、1863(文久3)年に松前の曹洞宗寺院法源寺の説教所として開設され、1897(明治30)年に現在の場所に移転。龍神堂の祭神「八大龍王」は、山形県の善寶寺から歓請されたと伝わり、龍神は海運業や漁業者たちの守護神として、日本海沿岸各地を中心に信仰されていた。

 

 福井県産の笏谷石(しゃくだにいし)でできた狛犬、三十三観音など、北前船による日本海沿岸各地との繋がりを伝える遺産が残っている。

 

 小樽最古と言われる塩谷神社は、1674(延宝2)年、近江商人西川伝右衛門によって創祀されたと伝わり、1790(寛政2)年に西川准兵衛がホッケマ社殿を創建し稲荷神社となり、1886(明治19)年にゴロタの丘付近に移転、1916(大正5)年に丸山神社と合祀して塩谷神社に改称、現在の場所に移転。地域に繁栄した神社となる。

 

 絵馬堂からは、軍艦1面と市内で確認された中で最古の船絵馬を含む30面、立体的な汽船の船絵馬や神棚にまつる稲荷丸の船名額など、徳源寺と同様に北前船による日本海沿岸各地との繋がりを伝える遺産が残り、北前船ストーリーが紐解かれる。

 

 「小樽と後志エリアの間に位置する塩谷地区の歴史遺産の発見により、小樽市の中心部から観光エリアを拡大し、歴史文化と海・山を組み合わせたさまざまな地域振興、観光振興などの可能性を掘り起こし、地域住民や周辺エリアの連携が重要」とまとめた。

 

 小樽市(迫俊哉市長)では、2019(平成31)年3月、小樽市歴史文化基本構想を策定し、同市の多様な文化遺産を基盤としたまちづくりや人材育成に重要な役割を果たし、市民とともに「小樽文化遺産」の保存活用に取り組むためのマスタープランとして位置付けている。

 

 迫市長は、「2018(平成30)年5月に日本遺産に選定されたことを契機に、北前船を活用したまちづくりを考える中、このような講演会は大変心強い。歴史文化の強みを生かしたまちづくりを進める上で大きな力となり、市民ともにまちづくりを進めたい」と述べた。

 

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