小樽市塩谷在住の雨谷邦雄さん(93)は、自宅側の海岸の清掃活動を35年間も続けている。
限界を感じつつ頑張ってきたが、体のことを考え、今年でその活動に終止符を打つ決断をし、最後の清掃活動に励んでいる。
青空が広がり、春の陽気に包まれた5月16日(木)13:00、塩谷海岸には、白いゴミ袋が30個ほど点在し、レーキ(雑草などを集める農具)を使って、砂浜に落ちている枝などを集めている雨谷さんの姿を見つけた。
側に近づくと、雨谷さんはにっこり笑い、作業を中断して清掃活動について語った。
富山県高岡市に生まれ、小樽市塩谷に住んで40年。退職後、初孫を連れ海へ遊びに来たところ、流れ着いた木や枝が砂浜を覆い、危なくてとても遊べる環境ではないと、次の日から、孫の子守をしながら清掃活動を始めた。
やりだしたらやめられない、とことんやらないと気がすまない性分で、35年間続けてきた。その真面目な姿が評価され、後志支庁・小樽市など4つの団体から表彰された。
雨谷さんは、「表彰されるためにやってきたのではない」と照れ笑い。
雪が融けた4月末頃から活動を始め、塩谷海岸の砂浜がある端から北ホテルまでを、1ヶ月ほどかけ毎日9:00から16:30頃まで、砂浜に流れついた木や枝・ゴミを拾い集める。
昼は、息子のお嫁さんが作った弁当が届けられ、海岸を眺めながら浜で食す。「とっても美味しい」と笑顔で話す。
砂が濡れる雨の日は中止とし、砂が乾いてから再開。大きな木が流れついたこともあり、のこぎりで切って処理を行う。
当初は、集めた木や枝を砂浜で燃やしていたこともあったが、今では、市から支給の90リットルのゴミ袋に詰める。多い時で320袋にもなった。
近年は、ゴミ袋を移動させるのが大変となり、砂浜に置いたままにして、市に回収を依頼する。
足腰もしっかりしていて元気そうだが、子どもの頃には、かかりつけの医者に、25歳までしか生きられないと言われたこともあるそうだ。
5月19日で満93歳になり、3回の手術経験もあって、8人兄妹の6男で、生きているのは雨谷さんだけ。清掃活動が長生きに繋がり、いつも海を見ながら元気をもらい、常に感謝の気持ちを忘れていない。
不思議なことに、最後となった今回は、いつになく流木が少ないそうだ。
雨谷さんは、「用事のない時に、好き勝手にやっているが、やりだしたらやめられない性分。これまでやめたいと思ったことはなく、ここまでできたことを誇りに思う。これからは、曾孫の成長を楽しみながら暮らす。強要はしないが、町内の人で気持ちがある人にお願いしたい」と話した。
今日(5月16日)は、いつも見ている丸山の雪が、全部解けた記念日だと教えてくれた。
砂浜が広がる塩谷海岸は、かつて多くの人で賑わう海水浴場だった。今も、季節を問わず、海辺を訪れる人の姿が見られ、砂浜で遊ぶことができるのも、雨谷さんの地道な努力のお陰だ。