市立小樽美術館(色内1)の特別展第4弾は、ガラスと絵画による「風土への賛辞 雪と氷のイメージ」が、1月6日(土)から3月4日(日)まで2階展示室で開かれている。
小樽在住の実力ある造形ガラス作家9名と当館所蔵の小樽ゆかりの作家12名の絵画作品、合わせて39点を展示。雪や氷をイメージした作品を集めた初のガラス展と、小樽をはじめとする雪国に住んだ者でなければ描けない冬の厳しさや凜とした冬の美しさを捉えた絵画を融合させた特別展となる。
ガラスの街と言われる小樽には多くの工房があり、それぞれの個性を生かして作品作りに励んでいる。芸術的思考を持ち、雪と氷をイメージした造形作品の制作を、昨年6月に依頼。全国的な作品展に継続的に出展し今回の特別展に相応しい9名の作品が集まった。
テーマに沿ってガラスを素材に工夫を凝らした作品を、会場の空間を使って展示しているため、この特別展のみ鑑賞できる作品も多い。
株式会社ザ・グラス・スタジオの浅原千代治代表取締役をはじめ、同スタジオ設立メンバーの影山勝博氏、佐川光信氏、浅原氏に師事した成中拓氏や真島兼二氏が、雪と氷のテーマを基にそれぞれに表現している。
浅原氏は、海岸の石を敷きその上に透明のしゃぼんだまに見立てた球体を散りばめた「はかない夢」、2つのガラスの器の中の液体ガラスが蒸発を繰り返し、雪が溶け水になり再び凍る氷を、無限に生まれ代わる生命にたとえた「輪廻」を出展。
影山氏のつららをイメージした「冬の風景」は、太陽の光に照らされたキラキラした状態を表現し、佐川氏ならではのイメージで、雪渓などにできる割れ目crevasse(クレバス)を制作。窓から見える冬の風景や天狗山の頂にある一本の桜の木の「Otaru Window」は、真島兼二氏の作品。網走出身の成中氏は、流氷と共に生活して知り尽くした者がイメージする「氷刻」を。
オリジナルガラス彫刻家「グラス・グリプティ」技法の山田セツ氏は、雪の結晶と春の桜、アイヌ文様を板ガラスに施し、鏡を合わせた「冬から春へ」と、彫刻を引き立たせる「レースコンポート」の2点。
STUDIO J-45(朝里川温泉)設立者の馬場雅已氏は、幼い頃の神秘的体験を吹きガラスの技法を主に「冬の天の声」を、新関千裕氏は、冬の夕闇の中にいる自分の心を表現した「青の心象」を出品。
小樽がらす市実行委員長を務め、Kim glass design(祝津)を主宰する木村直樹氏は、柔らかな風をイメージした「頬なでる風」と、友人への想いを形にした「リボーン」を出展している。
絵画作品は、小樽出身の1960年代から1970年代の金子誠治氏の版画「天狗山から」や、小林剛氏の「春遠からじ」、角江重一氏の「運河の倉庫」など、当館収蔵の冬を描いた作家の作品を集めた。ガラスの神秘さと冬の風景画の調和がとれ、来場者の目を楽しませている。
同館・星田七重学芸員は、「絵画においては、歴史的な小樽の著名作家が手がけた当館が誇る名品。これらの雪景色をご覧になると感動しない方はいないだろうと思うほど大切にしている絵画で、懐かしい昔の小樽の姿が大半を占めている。会場の半分ほどのボリュームを占めるガラス作品は、このテーマに合わせて北国の風土を自分なりに深く捉えて作り上げた新しい作品が主となっている。古い歴史的情緒が懐かしい小樽と、今をここに生きる新しい作家達との両方を見てもらいたい」と話した。
ガラスと絵画による 風土への賛辞 雪と氷のイメージ
1月6日(土)〜3月4日(日)9:30〜17:00
休館日:1/8・2/12を除く月曜日、1/9(火)・10(水)・2/13(火)・14(木)
市立小樽美術館(色内1)2階企画展示室
入館料:一般600円、高校生・市内高齢者300円、中学生以下無料
関連事業
出品ガラス作家によるアーティストトーク 2月12日(月・祝)11:00〜12:00
講師:木村直樹氏・山田セツ氏
講演会「ガラスのア・シ・ア・ト」 2月24日(土)14:00〜15:30
講師:浅原千代治氏
◎市立小樽美術館〜開催中の展覧会