小樽市の銭函海岸にある「おたるドリームビーチ」は、札幌近郊屈指の海水浴場で、夏のシーズンになると多くの道民・市民が利用することで知られている。
ところが、この海水浴場に立ち並んでいる約40棟の海の家が、建築基準法で毎年撤去しなければならないのに、過去11年にわたり、違法のまま放置されていることが市民の通報で分かった。
管理者の小樽市は、この違法状態を知りながらも11年にわたり、山田・中松市政下で、我関せずを決め込んで、黙認していた。市民の通報を受けて「小樽市コンプライアンス委員会」(山口均委員長)は、市に撤去の是正措置をとるように勧告した。
これを受け、当時の中松義治市長は、道とも協議の上、海の家協同組合(筒井弘子理事長)に2015年3月31日までに撤去しなければ、新たな許可を下ろさないと通告。撤去期限を巡り、組合と対立することになった。
今年4月の統一地方選挙で、現職の中松市長が、新人の森井秀明氏に大差で敗れ、森井市長が誕生し、この問題での舵取りが注目されることになった。就任した森井市長は、違法建築物を放置しておくことは出来ないと、前市長の撤去方針を踏襲した。このことで、今夏のドリームビーチの実質的管理者がいない事態となった。
このため、森井市長は、「おたるドリームビーチ」を市営海水浴場として設置し、管理運営を市で行うための補正予算1290万円を計上し、6月議会に上程した。
しかし、これまでの長年にわたる山田・中松市政体制で、絶対多数の与党を形成していた自・公・民から、代表質問や一般質問で市営開設に多くの疑問が巻き起こった。
しかも、本会議での森井市長の発言を巡り、市長と議員が鋭く対立し、議会は空転に次ぐ空転を重ね、議員から市長との信頼関係が築けないとの声が多数を占め、予算特別委員会での論議に影響した。
この結果、26日(金)の予算特別委員会は、市営海水浴場開設のための補正予算を全会派(自民・公明・民主・共産・新風小樽)で否決した。、この際に会派・新風小樽は、補正額を630万とする減額修正案を提出したが、他会派の賛同を得られず、否決された。
これにより、本会議でも1人与党では、多数野党の結論を覆すことは不可能で、29日(月)の本会議で、委員長報告通り、森井提案は「否決」されることが確実となった。
森井市長の初の自前予算成立の目論見も、絶対少数与党では、如何ともしがたく、市議会全会派の反対で白紙に戻されることになった。
これで、今夏の「おたるドリームビーチ」は、管理されない無法のゴミビーチとして、名を馳せることになった。不測の事故が起こった場合は、否決した市議会全会派の責任が問われることになる。
森井市長就任後の初の定例会で、市長が議会運営で満身創痍に陥ったことで、今後の森井市政の前途に暗雲が漂うことになった。
反市長派が多数を占める市議会の高い壁を、今後、森井市長がどのように超えていくか、若き新任市長に大きな課題が残されることになった。
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