12月1日(月)から開院する新小樽市立病院の前途に暗雲が漂っている。
約140億円もの巨額の事業費の投入で、大型の箱物は出来上がって、ようやく開院の運びとなったが、これまでの赤字体質の病院会計の穴埋めには、毎年、一般会計から約20億円もが投入されている。
平成19年度から平成25年度の7年間で、なんと138億円もの税金が、じゃぶじゃぶと投入されてきた。市職員のボーナス削減分もこの中に入っており、新病院の建設費に相当する巨額の市民の税金が、この7年間で、ただの泡となって消えていった。
公立病院ガイドラインに沿って、市の病院経営の実態を精査してきた「小樽市立病院経営改革評価委員会」(伊藤一委員長)が、9月19日付けで提出した平成25年度の評価報告書でも、いままでのズサンな病院経営が浮かび上がり、新病院の今後の運営を懸念する厳しい意見が並んだ。
同評価委では、市が公立病院ガイドラインで進めてきた、平成21年から平成25年度の5年間の改革プランを検証した。「総じて最終年である平成25年度プラン進捗状況結果の主たる財務指標は、目標未達成且つ数値は5年で最悪に終わった」とし、道内他市立病院との財務指標等の比較からは、「小樽市立病院での本当の改革は未だ始まっていない」と、財務指標が最悪の中での新病院の開院となることを重く受け止めるべきだとしている。
また、同委は、市立病院の病床利用率が極めて低い中、人件費が、北海道の他の自治体病院で最も高いことを、自らの調査で明らかにした。
「新病院におかれては、当面、職員給与比率の改善(人件費削減)と病床利用率向上(収益増)の2点の改善が最重要項目である」とした。
いわば、北海道で最も儲からない小樽市立病院が、それにも関わらず一番高い人件費を払っている実態を浮かび上がらせた。
そして新病院の前途は、旧病院の負の財政指標を引きずったままで、「収益増」と「人件費の削減」が図られなければ、ますます困難になることに大きな懸念を表明している。
この病院改革のためには、抜本的に現状の経営形態を見直し、「地方独立法人化を視野に入れた改革も検討する必要がある」ことも指摘している。
栃木県の新小山市民病院は、小樽市の新病院の半額の建設費で建てられているが、小山市では、いち早く独立法人化の道を探り、ついに2013年4月に地方独立行政法人とした。
その結果は、国の公立病院ガイドラインを作った長隆氏が、自身の11月8日のHPで報告している。
「昨年4月に地方独立行政法人(独法)となった新小山市民病院が、初年度から約1億9,700万円の黒字に転換した。 大久保市長は『今まで黒字になったことがなかったので驚いた。新しい病院でさらに改革を進め、業務効率化、サービス向上に努めていきたい』と話した」としている。
しかし、小樽市では、赤字分はいつでも市民の税金の一般会計からのんきに補填し続けている。いくつもの公立病院が、独法化移行で劇的成果を示している中で、小樽市の病院改革は遅々として進んでいないのが実情だ。
財務諸表の改善も病院改革も遅々として進まないと、新病院建設の起債返済のピークを5年後に迎え、平成31年度には、待ったなしとなる。小樽市の一般会計も病院会計も、5年後には破綻の危機が迫り来ることになる。
新市立病院の前途には、重い暗雲が漂い、開院で喜んでいられぬ病院経営の実態が横たわっており、市民は今後の動向を厳しく注視する必要がある。
◎長隆 twitter
◎平成25年度評価報告書
◎小樽市立病院改革プラン
◎関連記事