企画展「勝納川ー小樽を育んだ川」 市総合博物館


 豊かな水流と自然に囲まれた勝納川の歴史を辿り、文学や自然など様々な角度から紹介する企画展「勝納川ー小樽を育んだ川」が、4月29日(火・祝日)から、小樽市総合博物館(手宮1)2階企画展示室で始まった。
museum-katsunai1.jpg 市内ほぼ中央を流れる勝納川は、重要な水源として利用され、古くから市街地が開けた場所として、小樽市のあゆみと深い関わりがある。上流には豊かな自然が残り、希少な動植物の生息地でもある。
 小樽水道100年と合わせ、水道局の協力を得て、同館の収蔵資料等180点を展示し、歴史や自然など盛り沢山の企画展となった。
 小樽を育んだ勝納川は、急勾配で比較的短い川。そのプロフィールや、河口から上流までの様子を10枚の写真と地図で紹介。ダム上流の穴滝も含まれている。
 江戸時代に書かれた古文書「西蝦夷地高島日記(1808年)」に、アイヌ語で”豊かな川”を意味する「カツナイ」について詳しく書かれ、沢山の鮭の遡上があると記されている。また、松浦武四郎著「東西蝦夷山川地理取調図」には、同川や周辺の川名が詳しく書かれていた。
museum-katsunai2.jpg 度々川が氾濫し、1879(明治12)年や1962(昭和37)年にも大きな水害が起こり、当時の貴重な写真を展示している。1962(昭和37)年の水害後に、河口から奥沢水源地までに、16もの橋を作った。
 一方、勝納川の豊富な水量を利用して水力を使う工場が集まった。精米工場や醤油、酒の醸造業が集まり、1909(明治42)年には、40もの醸造業があり栄えた。また、市内の建造物に使われている小樽軟石が採石され、同川の上流の赤井川に繋がる道を行くと、松倉鉱山もあった。
 その後、1907(明治40)年に奥沢ダムの工事が始まり、1914(大正3)年に完成。小樽の水道ができ、100年の歴史を重ねた。ダム建設以前の写真や植林図、人力で作業が行われた様子なども紹介。いろいろな人達が関わり、ずっと管理を続けてきたことが分かる。
 文学の観点では、川の近くに住んでいた歌人並木凡平(1891~1941)の詠んだ同川に纏わる歌を紹介。同川は、それぞれの時代に様々な影響を与えていた。
 豊かな自然を残す勝納川周辺を、同館では、1994(平成6)年から1999(平成11)年まで調査している。それをもとに、小樽野草愛好会の協力を得て、昆虫では1,000種、植物では700種類が生息していることが分かった。その中から、代表的な昆虫と植物の標本90点を、春・夏・秋の季節に分けて展示している。
museum-katsunai3.jpg ミヤマカラスアゲハやミヤマクワガタ、オニヤンマなどを展示。度々の川の氾濫により川周辺には、渓畔林(けいはんりん)が豊かで、その木に集まるオオアオカミキリや絶滅危惧種に指定のオオイチモンジなども見つけることができる。
 川の中の虫では、カゲロウやトビケラ、環境省指定絶滅危惧Ⅱ類のニホンザリガニ、日本最大種トワダオオカと呼ばれる蚊も見つかっている。
 自然を担当した山本亜生学芸員は、「川が豊かで森も豊かな勝納川を、市民や近くの住民でも知らないことも多いと思う。是非、企画展を見て知ってもらいたい」と来館を呼びかけている。
 勝納川ー小樽を育んだ川 4月29日(火・祝)〜7月13日(日)
 休館日:火曜日(祝日の場合は次の日)
 ギャラリートーク
 5月3日(土)11:00 勝納川の歴史 講師:石川直章副館長
 5月4日(日)11:00 勝納川の自然 講師:山本亜生学芸員
 どちらも30分程度
 小樽市総合博物館(手宮1-3-6)本館企画展示室 問合せ0134-33-2523
 入館料:大人400円、高校生・市内在住の70歳以上200円、中学生以下無料