「第9回外沢照章・能面展」が、8月5日(月)から11日(日)まで、小樽市公会堂(花園5)地下展示室で始まった。
新作6点・生徒作品4点を含む34点の能面が勢揃いし、能楽堂前の展示室をぐるりと囲むように展示されている。端から「蛇」「赤般若」と続き、数々の迫力ある能面で、見応えのある展示会となっている。
主催者の外沢照章氏は1942年東京生まれ。父が建具職人ということもあり、子どもの頃がら木を削って遊んでいた。父の遺品をもらい受け、能面が掲載された1978年「別冊太陽」という本と出合い、42歳の時に、近くの能面教室を訪問したのが始まりとなる。
2003年に小樽へ移転、2006年に小樽で初個展。2009年からは公会堂で毎年開催している。今年で能面を打って29年が経ち、来年は30年の節目を迎える。登録している能面の種類は250種類あると言われ、その中で代表的な能面92点を作り上げるのが目標で、現在までの作品は71点。1年に製作する数は3作品くらいで、ざっと計算しても、あと7年かかるが、その完成を目標としている。
今回の新作は6品と多く、名物面「節木増」の新しい型紙を入手。以前ある型紙と新しい型紙から作り、違いを鑑賞してもらうコーナーを設けた。真正面からでは、違いが分らず、斜めから見ると、新作は奥ゆかしく、細めの面となり、以前の型紙からは、ふっくらとし目が大きく開いているのが分かる。
本面は、江戸時代以前に作られた面で、現在は模作中心で、名作の写しが行われ、どれだけ本面に近づけるか、使い込まれた彩色が剥がれ、木肌がすり減った状態や面の傷などを再現している。1点に対して30〜40の型紙がある。
外沢氏は、どの作品にも、モデル面を作り、難所などを記憶し、本番に活かす大変手の込んだ作業を積み重ねている。
能面専用の檜を取り寄せ、それを削り、裏には漆を塗り、表の下地には、日本画と同じ工程で胡粉と膠(にかわ)を塗り、発色を良くする。5回塗ってはサンドペーパーを掛け、顔の表情を出していく。この作業を5回続ける。まぶたや凹凸に溜まった膠を彫刻刃で削る作業は、細かい作業となる。髪の毛や目、歯を書き、最後に肌の色を決める。肌の色には展示している面からも違いが分かり、その時々の気持ちで決めているという。
29年間の作品の中で、一番気に入ったもは、「大癋見(おおべしみ)」作品で、20年前くらいのもので、半年ほどの時間をかけた手が混んだもの。この面に勝るものはなく、作品としての価値があるという。裏面には、赤と黒の2色塗り、表面は梨地仕上げ(たわしのようなものでキズを付ける)で、凹んだところに色が濃く出る。能では、天狗の面として使われ、「べしみ」は口をへの字にする「へしむ」を意味している。威嚇しているかのように迫力がある。能面打ちは、女面に始まり、女面に終わると言われるほど、口の開き方や、口の上げ方、目の表情など守らなければならない決まりがある。
展示には、面の名前の他、説明文や演じる曲目も記載してある。また、面と物語がリンクするように物語の内容も紹介している。
能の話は、どれも身近な物語が多く、その中で能面は、悲しみや怒り、喜びを表現する特徴がある。外沢氏は、「今回は、新作を6点と全体的にも多く展示している。節木増の2つの面を展示し、能面の真髄を比較し理解してもらい、他の面への見方が違ってくる。先輩達の能面作りの苦労に、いかに近づけるか楽しんでいる」と話した。
また、文化体験事業に参加し、市内や近郊の小・中学校へ訪問。、能や狂言を体験できると大変喜ばれている。この作品展が終わり、9月から来年の作品展の準備が始められる。
第9回外沢照章・能面展 8月5日(月)〜11日(日) 9:00〜17:00
小樽市公会堂(花園5-2-1)地下1階展示室 入場無料
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