小樽市総合博物館(手宮1)で「いま博物館で調べていること」の調査研究報告会が、11月10日(土)13:00から、本館2階研修室で開かれ、市民ら20名が参加した。
あまり表に出ることの少ない「調査研究事業」について、市民に紹介しようと初めて企画した。担当者の同館学芸員・指導員4名が5つの事業について詳しく解説した。
小樽の今を残す考現学的調査について、同館・山本侑奈指導員が報告した。
はじめに、博物館所蔵の4万人観衆の運動会や、明治30年頃の貸し自転車の様子や、小樽高女の女学生のスキー姿の写真などが示された。スキー写真から、ストックの数が1本や2本と様々で、1本で伝わったストックの数が、2本へと変わっていった過渡期を、このように過去の事柄として記録している。
調査・収集する研究する資料、ことに歴史的資料は、過去の小樽を集めることになるが、そこからこぼれてしまった事象も多い。その時は、あたり前だった今を記録をしておくことが必要であり、いつのまにか姿を変えていった例は沢山ある。今を記録する手法のひとつが昭和初期に生まれた「考現学」だという。社会現象を場所、時間を定めて組織的に調査、研究し世相や風俗を分析する。
昭和3年に小樽の花園町大通り(現在花園銀座街)で実施され、男性17項目、女性15項目、ネクタイ、ズボン、顔の表情などについて、旦那、番頭、丁稚(でっち)、御用聞きなどに分かれて調査した。今年9月に、84年ぶりに同じ場所で、来年1月の企画展「ハイカラの町小樽」の一部で、紹介展示する切り口として行った。
花園銀座街のガード下で、8人1組で、細かく調査し記録した。以前の項目を見直し、男女8項目について、今回は、写真を取り入れた。このデータは、20年後、50年後に貴重なものとなる。昭和3年は着物が多く、平成24年はワイシャツが多かった。持ち物では、昭和3年では、何も持っていない人や、風呂敷包み、平成24年では、ショルダーバック、コンビニ袋と著しい差が分った。
今後継続して、5年後、10年後と再調査を予定。今のデータとしては薄くても何枚か重ねると、それに歴史が見えて来ると説明した。
さらに、今回報告した研究事業では、大鐘卓哉学芸員が「最多記録を更新した2012年の蜃気楼『高島おばけ』について、山本亜生学芸員が「小樽から新しく発見された動植物」について、佐々木美香指導員が「小樽の和菓子文化を木型から探る」について、山本侑奈指導員が「二万ページが語る小樽の歴史ー稲垣日誌の調査」について報告した。