おたる市民能が、9月1日(土)、旧岡崎家能舞台・小樽市公会堂(花園4)で開かれ、多くの人が集まり盛況となっていた。主催は旧岡崎家能舞台を生かす会。
8月24日に、閉じられていた切戸が51年ぶりに開けられ、楽屋も設けられた。昨年同様、空堀に床を張り客席とし、役者や観客の意見を取り入れ、音が部屋の奥まで聞こえるように、反響板となる板は冬囲いを利用して設置した。改造による本格的な能舞台が完成し、出演者はそれぞれに満足していた。
この新しい能舞台で「市民の、市民による、市民のための手づくり能楽公演」が開かれた。
公演に先立ち、おたる市民能を窓口に東日本大震災への義援金を募り、多くの市民の協力を得た。日本赤十字社北海道支部小樽地区・中松義治地区長(小樽市長)と小樽ユネスコ協会・丸田謙二郎会長へ、義援金目録の贈呈式が能舞台で行われた。
同会三ツ江匡弘会長は「能を切り口に社会貢献をしたい。十勝岳災害復興のための義損能が大正末期に行われ、チャリティーなどでも、能に親しんでもらうための工夫が、先駆け的に実施されていた。この先人の意志を継承した」と話した。
厳しい残暑で汗ばむ会場は満席となり、17:30から開演した。能楽北海道おたる教室のメンバー5人が同吟「四海波」を謡い、仕舞「熊野」、独吟「竹生島」、連吟「経政」と続いた。
万作の会、旧岡崎家能舞台を生かす会・能楽体験ゼアミナールによる狂言「仁王」では、博打で負けてしまった男が、博打仲間に相談したところ、仁王尊に仕立て、お供え物を頂き、それを利用し、もう一勝負しようと提案する。大勢の参詣人が願いを込めてお供えを置いていく。足の悪い男が現れ、足が良くなるように願いを込めて、仁王の足を撫でる。くすぐったさに仁王の顔はゆがんでしまった。仁王に化けている姿や顔の表情に会場から笑いが沸き起こっていた。
謡(うたい)を体験するワークショップも行われた。「橋弁慶」のシテ(弁慶)とツレ(弁慶の家来)の一部分を抜粋して、シテ方宝生流師範・能楽師菅田昌義氏が講師となり、観客全員が参加し、講師のあとについて謡を体験した。
「橋弁慶」で牛若丸を演じる若竹小学校3年生の田中謡子さんをモデルに、能装束着付けが紹介された。最後に半能「橋弁慶」では、弁慶を三ツ江氏、牛若丸を田中謡子さんが演じ、日々の練習の成果が発揮され、 多くの市民が市民能を楽しんでいた。