小樽市銭函地区に、高さ100mの風力発電機20基が建ち並ぶ、大規模な風力発電所建設計画を推進していた、日本風力開発株式会社(東京都港区・塚脇正幸代表取締役社長)が、経営危機に陥っており、小樽での事業展開は、風とともに消える事態となっている。
同社は、2009年5月、石狩湾新港に隣接する銭函地区に、出力2,000kwの風力発電機を20基建設し、合計40,000kwを確保し、同時に合計30,000kwの大容量蓄電池を併置する計画を発表。
この計画が浮上すると、7月には、石狩砂丘の生態系全体を守るため、「銭函海岸の自然を守る会」が結成され、12月には会社側と話し合いなどを行ってきた。
しかし、その後、日本の風力発電事業そのものが、経営の見通しが立たない状況に立ち至り、国内における新規の風力発電所建設がストップしてしまった。このため、東証マザーズに上場している日本風力開発も赤字に苦しみ、有価証券報告書に継続疑義の注記が出る異常事態の経営危機に追い込まれた。
このため、同社は既存の発電所を売却せざるを得なくなり、新規の発電所建設どころでなくなり、平成24年3月期には、14億円もの営業損失が出ることになり、その対応に追われることになった。
同社の平成24年3月期 第2四半期決算短信では、「当社グループでは、前連結会計年度まで2期連続で営業損失、経常損失、当期純損失を計上しており、当第2四半期連結累計期間においても、1,405百万円の営業損失を計上することとなりました。また、当社グループにおいて、風力発電所設備建設に係る融資等において返済の不履行が発生しております。平成23年11月に取引金融機関等15社より、借入金の返済に関して返済猶予を行なう同意を得ることができましたが、現時点においては、これらの事項が発生していることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております」とし、同時に、銭函風力発電の補助金を含む12億円余りを、新エネルギー促進協議会に返 還したと2011年11月に公表していた。
しかし、同社はこれ以前の6月には、由良発電所を売却しており、その頃から既に銭函発電所の新設などは、望むべくもない経営危機に陥っていたことになる。
これにより、銭函風力発電所建設計画は、風とともに消える運命となった。建設促進で、税収増を期待していた小樽市役所にとっては、手痛い建設ストップとなっている。
石狩砂丘に咲くハマナスは、この一連の騒動をどう受け止めたのだろうか。
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◎日本風力開発株式会社 平成24年3月期 第2四半期決算短信(日本基準)(連結)