中松義治市長(64)を船長に抱く小樽市役所の新造船「中松丸」が、パー券事件で出航直後に”大座礁”を起こし、その黒い船体は、行方も定まらぬまま暗礁に乗り上げている。
2人が逮捕され、13人が書類送検された中松市長の後援会が起こした市役所内での公務員の地位利用による政治資金規正法違反事件は、逮捕された2人の勾留期限が切れる週末の土日を控えた5月20日(金)に、司法による一連の手続きが終了した。
事件は、松川明充・中松後援会事務局長(62)から1枚3,000円のパーティー券150枚の販売を依頼された山崎範夫・総務部長(58)が、公務員の地位を利用、幹部職員に販売を依頼し、部下に販売するなどして計143枚を捌いたというもの。
結局、逮捕された2人と書類送検された13人の内10人の計12人が略式起訴された。これにより、札幌簡裁は、同日、逮捕された2人に罰金30万円・公民権停止5年、書類送検された10人に罰金15万円・公民権停止4年、団体の中松義治後援会に罰金30万円を科す略式命令をだした。
この略式命令は、正式裁判の請求期間(14日)の経過により、確定判決と同一の効力を生ずることになる。
罰金と公民権停止の略式命令を受けた12人のうち、現職の部長が8人おり、行政運営は麻痺状態に陥っている。今後は、市長がこの現職部長らにどのような処分を下すかに注目が集まることになる。なお、山田厚副市長もパー券販売の関与をみとめたが、地位利用を問えない特別職だったため立件が見送られた。副市長の任期は、5月末で、このまま任期切れを迎えることになりそうだ。
立件した札幌区検察庁は、「公務員の政治的な中立性を傷つけ、市民の信頼を失墜させた悪質な事案だ」と異例のコメントを出した。
自民・公明・民主の3政党と連合小樽・商工会議所の5団体の長年の相乗り体制にどっぷり浸かり、「赤信号みんなで渡ればこわくない」とする小樽市役所の体質は、世間や市民の常識とは大きくかけ離れている。「悪質な事案」とされたこの事件を風化させることなく、原因の徹底的な解明と関係者の厳しい処分が求められている。
この事件は後援会がやったことで、われ関せずを決め込んでいる中松市長に対しては、後援会関係者からも批判の声が上がり始めており、座礁した「中松丸」が再び動き出すまでには、まだまだ波乱がありそうだ。
≪司法処分の結果≫
◎逮捕=取調べ=略式起訴=略式命令=罰金30万円・公民権停止5年
◎公民権
◎略式手続
簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、百万円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。
検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確めなければならない。
被疑者は、略式手続によることについて異議がないときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。
略式命令の請求は、公訴の提起と同時に、書面でこれをしなければならない。
前項の書面には、前条第二項の書面を添附しなければならない。
前条の請求があつた場合において、その事件が略式命令をすることができないものであり、又はこれをすることが相当でないものであると思料するときは、通常の規定に従い、審判をしなければならない。
検察官が、第四百六十一条の二に定める手続をせず、又は前条第二項に違反して略式命令を請求したときも、前項と同様である。
裁判所は、前二項の規定により通常の規定に従い審判をするときは、直ちに検察官にその旨を通知しなければならない。
第一項及び第二項の場合には、第二百七十一条の規定の適用があるものとする。但し、同条第二項に定める期間は、前項の通知があつた日から二箇月とする。
前項の場合には、裁判所は、決定で、公訴を棄却しなければならない。略式命令が既に検察官に告知されているときは、略式命令を取り消した上、その決定をしなければならない。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
略式命令には、罪となるべき事実、適用した法令、科すべき刑及び附随の処分並びに略式命令の告知があつた日から十四日以内に正式裁判の請求をすることができる旨を示さなければならない。
略式命令を受けた者又は検察官は、その告知を受けた日から十四日以内に正式裁判の請求をすることができる。
正式裁判の請求は、略式命令をした裁判所に、書面でこれをしなければならない。正式裁判の請求があつたときは、裁判所は、速やかにその旨を検察官又は略式命令を受けた者に通知しなければならない。
正式裁判の請求は、第一審の判決があるまでこれを取り下げることができる。
第三百五十三条、第三百五十五条乃至第三百五十七条、第三百五十九条、第三百六十条及び第三百六十一条乃至第三百六十五条の規定は、正式裁判の請求又はその取下についてこれを準用する。
正式裁判の請求が法令上の方式に違反し、又は請求権の消滅後にされたものであるときは、決定でこれを棄却しなければならない。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。
正式裁判の請求を適法とするときは、通常の規定に従い、審判をしなければならない。
前項の場合においては、略式命令に拘束されない。
正式裁判の請求により判決をしたときは、略式命令は、その効力を失う。
略式命令は、正式裁判の請求期間の経過又はその請求の取下により、確定判決と同一の効力を生ずる。正式裁判の請求を棄却する裁判が確定したときも、同様である。