基本設計後の新病院工事費139億9,200万円


shinhospital-image.jpg 小樽市病院局(並木昭義局長)は、新病院建設で、昨年7月から進めてきた基本設計後の概算工事費が139億9,200万円になったと18日(金)に発表した。
 市の新病院建設計画は、「2つの市立病院を質の高いより効率的な新病院として統合することにより、地域医療を守り、財政負担の軽減を図るため」に着手した。
 山田勝麿市長は、当初、築港地区で基本設計を発注したが、起債許可の見通しが立たなかったことから中断。2,581万円の委託・解約料を業者の久米設計札幌支社に支払った。この後、建設場所を築港地区から量徳小跡地へと方針転換し、基本設計を再び3,780万円で同社と随意契約した。
 基本設計発注時の基本計画は、23科・388床・総額148億7,300万円(建設工事96億300万円・1平米33万円・総床面積29,100平米) で、小樽市医師会は、「安価でコンパクト」にすべきと反対したが、市はそのまま設計を進めてきた。関連記事1 関連記事2
 市病院局は、2月の基本設計業務完了前に、あらやましを作成し、改めて設計概要・基本的な考え方、配置・断面・平面図、工事費などをまとめた。これによると、建設工事費は、1平米当たり29万9,700円で89億4,6000万円と算定。付帯工事33億9,000万円と建設に伴う費用47億700万円を合わせた総額は139億9,200万円と示した。
 当初の1平米当たりの工事費は33万円で、基本設計後の単価は3万300円下がる格好となったが、それでも一床当たり3,606万円と高額。済生会小樽病院が進めている新病院(250床・55億円)は一床当たり2,200万円で、これと比べると1,406万円も高い計算となる。
 この民間との価格差について、市病院局経営管理部の鎌田隆俊副参事は、「細かい内容が示されていないので、公立と民間を比較することは出来ないが、建築費は病院の負担を下げるようにとオーダーした。量徳小跡地は高さの制限があり、必要なものを地下につくらなければいけないが、地盤の深いところに固い部分があり杭に金がかかるので、3万円割り増しになっている」としている。
 市は、この建設費を病院事業債や過疎債の借金で賄うことにしているが、これには、2010(平成22)年度で11億6,303万8,000円の不良債務を解消し、 2013(平成25)年度までに31億9,044万円の資金不足額を解消することが条件となっている。
 総務省の公立病院改革ガイドラインでは、「一般会計からの根拠のない繰入は20年度からは認められない」としているが、市では、2010(平成22)年度中の不良債務解消のため、一般会計から3億円の繰入を行うことにしている。
 小山秀昭次長は、「起債を借りるために不良債務を補正で解消する。職員に対する住居手当は配意し、医療職員給与表の導入もまだ組合と妥結していないが来年 4月までには妥結するので、条件整理は出来ている。あとは北海道と淡々と話しをしていく」と話していた。
 この「基本設計のあらまし」は、2月23日(水)の小樽市議会市立病院調査特別委員会で報告される。
 任期残すところわずか2ヶ月と迫っている山田勝麿市長は、なりふり構わず新病院建設に邁進しているが、2009(平成21)年度の病院事業決算では、資金不足比率が13.3%となっており、総務省の病院新築・起債許可の判断基準とされているが資金不足比率が10%以下に達しておらず、これをクリアしない限りは、山田市長が進める病院事業の前途はまだまだ不透明だ。
 これは、築港地区での新病院建設でも失敗したことであり、任期直前に強引に実施設計を発注しようとしているが、前回と同じ道を辿る可能性も高く、まだまだ前途に大きな課題が山積している。
 この巨額の新病院建設については、山田後継の中松義治市長選候補予定者(64)はこのままの計画を踏襲しようとしているが、16日(水)に市長選出馬を表明した元衆議院銀の佐藤静雄氏(69)は、この実施設計を中止し市立病院を民間に譲渡することを明言しており、新病院の行方が今回の市長選での大きな争点となってきた。佐藤氏は、小樽を疲弊させてきた大きな原因のひとつに、毎年20億円にも及ぶ一般会計からの多額の繰出金を上げている。豪華な病院を建設して、右肩下がりになっている病院の収益悪化を新病院で食い止めることも難しいとする病院関係者も多く、今後も繰出しが続くようになると、さらに小樽の財政を圧迫することになる。
 この意味で、4月に行われる市長選では、豪華病院建設(中松義治氏)か、民間譲渡(佐藤静雄氏)か、見直し(森井秀明氏)かが問われることになる。
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