一原版画の奥の世界伝える 制作資料の遺品 文学館へ


itihara-ihin.jpg 10月1日(金)に死去した小樽在住の世界的版画家・一原有徳さん(1910・明治43生)が生前、創作のために集めていた資料が、遺族から市立小樽文学館へ届けられた。
 玉川薫副館長は、「一原さんの創作の奥の世界を伝える大事なもの。これらの資料で、一原さんの奥まった部分を伝えたい」としている。
 一原さんは、独創性に強いこだわりを持ち続け、金属板に薬品をかけたり、版を道具や機械で荒らすなどの手法を使った金属凹版や、モノタイプをつな いだ巨大な版画、廃材を拾い集めたオブジェ作りなど、次々と新しい表現を生み出してきた。
 晩年、体調不良などが原因で、従来の制作活動が出来なくなり、市立小樽美術館が、潮見台のアトリエからプレス機を譲り受けることになった。美術館の一部に展示し、それを中心とした一原さんのアトリエを再現することを決めた。しかし、一原さんは、再現アトリエ工事を含む美術館整備事業が 本格的に始動したばかりの10月1日、老衰のため死去した。
 死去から2週間が経ち、遺族は、一原さんが創作のために集めていた資料の数々を市立美術館に提供することにした。しかし、同館では取り扱いが難しい資料だったことから、文学館で保管し、展示することを決めた。
 遺族から提供された資料は、大量の車のバックミラーやサイドミラー、友人からもらった世界各地の石、箱一杯の松ヤニ、ボロボロの地形図など。
 玉川副館長は、「一見、ガラクタに見えるかもしれないが、一原さんが、理屈抜きで惹かれたものと感じる。物や手触りに取り付かれ、俳句、登山、小説、版画など、様々な方法で表現されてきた人で、愛着の対象となっていたものを引き取らせて頂いたので、一原さんの奥まったことを伝えられるよう にしたい。一原さんの創作の奥の世界を伝える大事なもの。バックミラーをどこから手に入れてどのように使おうとしていたのか空想を刺激される」と話している。
 一原さんの遺品の数々は、来年4月の再現アトリエ完成時に公開される。
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