文学館・美術館の4本のポプラ並木の伐採問題で、「市民の手で貴重なポプラ並木を守ろう」と市民有志が立ち上がり、9月5日(日)に「ポプラ並木を守る会」(松浦光紀代表)を発足させ、ポプラ保存の活動を強化することにした。
ポプラ並木の伐採は、小樽市の「小樽文学館・美術館再整備事業」(1億4,630万円)の一環で行われようとしている。
市の伐採理由は「倒れた場合の危険性を回避するため」の一点張り。この何の科学的根拠も示されないまま伐り倒されるポプラを守ろうと、市民たちが立ち上がり、署名活動を始めた。
このほど、発起人10人を含む15人が、市民センター・マリンホール(色内2)に集まり、「ポプラ並木を守る会」を発足させ、市議会に署名とともに陳情書を提出することを決めた。
この後、この4本のポプラ並木を診断した、小樽在住の樹木専門医・中村哲世さんを招いて勉強会を行った。
中村樹木医は、「僕は、開発局やほかの自治体などからの依頼で、ポプラについて診断している。ここのポプラ並木は、街路樹の定義に入らない。このポプラは、街路樹ではなく、堂々とした緑地帯に立っており、環境が全く違う。僕が診断してきた北海道のポプラは、耕地防風林として風が強い場所に植えられているが、それらはだいたい30年くらい経ったらそろそろだと見て取れるが、ここのポプラはそういう兆しは全く見えない。
トップの市長の発言で、変だなと思うところがある。市長は、ポプラの寿命が50年か60年と言うが、誰が言っているのか。よくよく追及すると、自分の身の回りの世間話だったりする。誰が言ったのか追及するべき。寿命については、根拠が難しく、冊子にまとめられない。ポプラの寿命は、100年や120年という人がいても、150年という人もいる。環境によって違います。
ポプラが植えられている文学館・美術館の駐車場は、舗装とは言えない。札幌市の業者として街の公園も設計しているが、失礼ながら、あそこの舗装は天ぷら舗装で、舗装と言えず、ポプラの根にとっては非常にラッキーだった。土の上に簡易舗装を5センチか3センチ引いただけ。ボロボロだし、下がすぐ土になっている。
ポプラは根が浅いというが、『樹木根系図』を見ると、深根性の松のように2mぐらいの根の深さがある。ポプラは浅根性で、松類は深根性でけっこうな風圧に耐えられる。ふんばりが違う。浅根性は横で踏ん張っているだけで、支持根が死ぬとだめで、支持根が死ぬと上の葉の色が変わる。こんなに青々としていない。根はデリケートで、これ以上ダメージを与えず、根を養生し、そいうことに気をかけて措置をすればまだまだ生きられる。なんでイタヤカエデを代わりに植えると言っているかわからない。イタヤはもっと根が浅い。ポプラは、深根性とは言わないが、あきらかに他の木よりも深い。どうして浅いと言えるのか。だれも寿命が50 年、60年と言えない。僕の感覚では50年は折り返しだ。
やはりちゃんと生育するだけのスペースがあり、それを確保して、なるべく人が往来しないように根を固めないようにする工夫はいくらでも出来る。駐車場になっているが、今は致命的なダメージは与えられていない。ダメージがあると、めっきり葉の色が変わり怪しくなる。
本来は何も手をつけなくてもいいが、都市の中に生えているので、枝をすかしたり、風圧を軽減させる。葉っぱがない時期にやらないといけない。夏は胞子が飛んで病気になる。植物の病気の8割は菌で、そういうのに感染すると大変になる。
樹木のことを分かり合って保護していく必要がある。高齢者の問題もニュースになっているが、100歳以上は生きる。温存させるのであれば、今の僕の感じとしては人生の折り返しからちょっと行ったぐらいで、後期とは思えない。つやもいいし、樹皮も痛んでいない。
絶対はないが、よほどのことでないと倒れる心配はない。皆さんは、正々堂々と、資料を集めて真正面から向かって進んでらっしゃると思う。受けて立つ市役所は何も準備していない。皆さんが色々な資料を揃えても、市長はなんだかんだ言っても伐りたいだけ。一本倒れたというが、たまたまそれが腐っていたのかもしれない。風速がどれくらいで倒れたのか資料を揃える必要がある。わからなければ気象台のアメダスで調べれば良い。色々な自治体に出入りしているから、他の役所と比較してしまう。札幌市と比べると、札幌は10も資料を揃えているが、小樽は全く逆。
ポプラの診断結果については、ポプラに落ち度はない。樹木医なので中立で保持する立場で話すが、伐る伐らないは人間の都合で、ポプラに落ち度がない。
これほど皆さんが集まって議論するとは思わなかった。だから生の声を話そうかと、今回ここに来た。もともと僕は札幌の人間で、12年ぐらい小樽に住んでいるが、仕事は札幌で、あまり小樽は詳しくない。周りの小樽の人は緑に関心がないと思っていたが、今回の運動は意外だった。ちゃんと意識を持って守るものを守ろうとしている。
あと結論は、小樽市民の意識だと思っている。倒れる原因は、植物にとってのふんばり。根ですよね。唯一人間と違うのは、樹木の芯は、死んで固くなって自分の体を支えている。鉄筋コンクリートのようになって身を支えている。芯に菌が入ると腐朽して耐え切れなくなり、あるとき倒れる。
幹から倒れることは、ほとんどない。ほとんど根っこからバタっといく。どんなに腐っても、幹から倒れることはない。根にちゃんと補強を与えることが大事。とにかく芯に腐朽がないと、そうそう倒れない。
市長の発言があまりにも短絡的で、科学的根拠はゼロだ。樹木医は、どんな小さな木を診ても真剣で、今回のポプラ並木の樹木診断は、私は命がけでやっている。私が生きている間は、全部責任を背負う。樹木医としていいかげなことは出来ない。安易に診断書を書き上げているつもりはない。
所詮人間が考えたことなのだから、この外構工事の設計変更はいくらでも出来る。イタヤカエデを植えるというが、イタヤカエデを植える根拠は全く分からない。なぜポプラを伐って、イタヤの大木を植えるのか。これは横に広がる木で、かえって風圧を受ける。イタヤカエデは大木で有名な木で、なぜここに植えるのか分からない」と、市の科学的根拠のない伐採姿勢は問題だと詳細に説明した。
樹木医の専門的な知識に裏付けられた根拠ある話の展開に、参加した市民からは、思わず「ガッテン」の握りこぶしを机に叩く人が何人も出た。
今後、市役所の担当部局は、樹木医に反論するだけの資料を揃えて、なぜ健康なポプラを伐り倒すのかの理由を、樹木医を交えての公開の話し合いの場などで、市民に説明する必要がある。
問合せは、事務局0134-64-5020(浅草橋パーキング・港町5)または0134-32-4618(熊澤歯科・稲穂2)まで。署名呼びかけ文と署名簿は、ダウンロード出来ます。
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