山田勝麿市長は、11年間で何も出来なかった公約の新病院建設計画で、3期12年の任期最終年の1年を切った5月に、「広報おたる」で中断した基本設計を再開し、新病院建設を進めることを発表した。6月市議会で基本設計料の予算措置を講じることにしている。
これに対し、公立病院改革ガイドラインをまとめた長隆氏は、過疎債を当てにした市の新病院建設再開で、「小樽市中心の計画では、北海道庁・総務省の同意は得られるはずがない」と注目すべき指摘をしている。
長氏は、総務省の地方公営企業アドバイザーを11年間務め、その後、公立病院改革懇談会の座長として、「公立病院改革ガイドライン」をまとめ、現在は、内閣の行政刷新会議の事業仕訳の評価員(仕訳人)として活躍中。小樽市長が不当に支出したとして公金の返還を求める住民訴訟の原告の証人として、5月13日 (木)に札幌地裁で証言。市長の進める新病院建設で、基本設計を再開する姿勢を鋭く批判し、市が当てにする過疎債での建設は、国が認めることはないとの発言を行なっている。
長氏は、これまで山田勝麿小樽市長が進めていた築港地区での新病院の起債が認められないことを、3年前から強く指摘してきた。結局、市長は、起債が認められないために契約した基本設計を途中で投げ出し、2,581万円を無駄にした。このため、市民から、住民訴訟が起こされ、すでに10回の口頭弁論が開かれている。
小樽市は、5月の広報で、新市立病院の建設地を、これまでの築港地区から「現小樽病院敷地と量徳小学校敷地を合わせた場所」に変更し、中断している基本設計を再開すると発表。6月市議会での基本設計料の予算計上を目論んでいる。
第10回口頭弁論の証人尋問に立った長氏は、この情報を基に、ホームページや裁判後のインタビューで、この問題を取り上げている。
「選択と集中・再編ネットワークの国の方針を全く無視し『小樽市中心』の計画では 北海道庁・総務省の同意は得られるはずがない。人件費率・病床利用率・医業収支比率についてガイドラインの目標数値を達成し 基準内繰り入れで経営できて初めて過疎債の起債協議が始められるのは当然である。資金調達が出来ないのに『基本設計を再開する』という表現は虚偽で裁判対策にすぎない」と述べ、さらに、「そもそも小樽には協会病院、エキサイ会病院、済生会病院などがあるので、小樽病院の機能はほとんどいらないという多くの小樽市民の声を無視して総務省・財務省が同意を与える事はありえない」と指摘している。
小樽市長と市議会は、これまで、築港地区での新病院建設に邁進し、起債の許可が得られる条件を満たしていないにも関わらず、 基本設計の契約を締結するなど、無謀な計画を推し進めていたが、結局、長氏の指摘する通り、起債は認められず、建設中断を余儀なくされていた。
その後も、官民の再編ネットワーク化の結論も出さないまま、今度は、また基本設計を再開しようとしている。市長の暴走を止められず、行政をチェック出来ない市議会のままで、議員が市長のイエスマンで推移するならば、市議会議員の存在理由は全くないに等しく、市民からも厳しい批判の目に晒されることになり、次回選挙での審判にも大きく影響することになろう。
長氏の主な発言は、以下の通り。
「小樽市は、懲りずに、場所を変えて、また豪華病院を建設するための基本設計を再開すると広報5月号で発表しているが、とんでもないことだ。11 年間、公立病院を見てきたが、小樽は、特別例外的に悪い。一日も速く、努力する医師、看護師が報われる病院にしなければならない。
経営形態の変更も出来ない、退職引当金も全然積んでいない、ざぶざぶの税金投入でしか保てない今の状況では、国が過疎債を認めることはあり得ません。6月議会で基本設計の予算措置をするようだが、総務省が過疎債に同意することはありえないので、新病院の建設再開が出来ないことは明白だ。不良債務を解消し、一般会計からの繰出しを止めることこそが先決だ。市は潰せないと言っているが、恐らく、医師・看護師に見捨てられ,銚子市立病院と同じになるのではないか。5年先には、今の市長はいない。小樽は、市内の病院の再編統合が必要で、市が公立病院を経営するのは、不適格だと思う」
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