小樽佛教会(野村定弘会長)の花まつりの夕べ記念講演会「むしろ身体を語りたい」が、5月24日(月)18:00から、市民センター・マリンホール(色内 2)で開かれた。
4月8日の釈迦の誕生(降誕会)を祝うイベント「花まつり」。同会では、5月14日(金)と22日(土)~24日(月)、市内各所で記念行事を行ってきた。
最後の行事となった記念講演会には、東京大学名誉教授の養老孟司氏を講師に迎えた。400万部のベストセラー「バカの壁」や、サ ントリー学芸賞受賞の「からだの見方」などで知られる著名人の講演とあっ て、会場の430席はすべて埋まり、パイプ椅子を追加で用意する盛況ぶり。
講演に先立ち、野村会長は、「小樽佛教会は、古い歴史がある。前進の会が明治17年に設立され、120年になる。花まつりは、大正11年から続いている。当時は、3,500名の市民がパレードに参加し、花園公園で、灌仏法要(かんぶつほうよう)を行った。小樽佛教会の行事というのではなく、小樽市民の行事として行われていた。現在は、規模は小さくなったが、毎年、花まつりを開催している。今日も、多くの方々にご参加頂き本当に嬉しく思っている」と挨拶した。
養老氏は、「むしろ身体を語りたい」と題し、独特の切り口とユーモラスな語り口で、聴衆を何度も笑いに誘った。「動くとは何か。脳みそは、入ってくる感覚と、それを入力し、真ん中で演算、計算する。身体を使うことは、最後の運動で、身体を使っていることは脳の運動になる。野球もサッカーも脳みそを使わないといけない。これが分からない人は、今日、脳卒中になって下さい。筋肉が動かないと、脳が立派なことを考えても、イエスもノーも言えない。首も振れないのだから。
『寡黙なる巨人』の多田富雄先生は、指一本しか動かなくなっても本を何冊も書いた。病気になって、指一本でパソコンを打つ状況になってから、毎日生きている実感が得られると話していた。五体満足の人が、毎日生きていると感じているのだろうか。身体を動かすことと関連してくるが、人間は、制限されてから生きていると実感する。
同じ平らなところを歩くことは、プログラムすれば、ホンダのロボットも出来る。しかし、この開発には何百万円とかかった。一歩あるくだけでいくらだろうか。しかし、人間は、ほとんどかかっていない。ホンダがプログラムを改良しているが、みなさんは改良しましたか。
文明化で、身体を動かさないで済むようにする。それで、人間は生きがいがないと、ブブツ言っている。身体を動かさない代わりに、せめて口を動かそうと、ブツブツ文句を言う。
身体のことは、案外、現代社会で生きていると気づかない。それが、脳の働きだと気づかない。脳の3分の1が運動で、昔の人は良く言ったもんだ、それを体育と言った。今のテニスやサッカーは、体育と言わない。虫取りに外行って山に登ることが典型的な体育だ。いつもは硬い地面も、雨の日にどろだらけの道になるが、いつもと同じ歩調で歩く人がいた。人間の身体は訓練すれば出来る。どうしてやらないかというと、周りがそうしてしまう、動かないようにしてしまう。
機械を丈夫にすると人間が壊れる。機械を便利にすると、人間が駄目になっている。若者はそれを分からない。大人が教えてあげなければいけない。本当の意味での体育を考えて頂きたい。日常生活からのものしかない。
脳は、寝ている間、昼間働いたから休んでいると思っているだろうが、脳みそは寝ている時と起きている時で、どれくらいエネルギーを使うかというと、寝ている時と起きている時とほぼ変わらない。脳の中に無秩序がたまり、寝ている間整理しないといけないから、同じだけエネルギーを使う。脳は、寝ている間に、秩序を戻している。
大人になって世界で生きていくと、違いが分からなくなる。時間が経っても変わらないことを、現代社会では情報と言っている。新聞もテレビも情報、ビデオに録っておけば、1000年先でも見れる。佛教の無常も無我も似たようなもので、自分は変わっていても、700年経っても情報は変わらない。ひたすら変わっていくのは人です。たまには身体のことを考えて欲しい」と語った。
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